Jun潤

映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)のJun潤のレビュー・感想・評価

3.8
2024.03.01

毎年恒例シリーズ。
今年のドラえもんは“音楽”がテーマ。
情報解禁のタイミング的に『ONE PIECE FILM RED』に感化されたのかとか思いましたが、日本アニメーション映画自体における音楽の重要性が高まっている中での今作というのは自然な流れなのかも。
昨年のエンドクレジットで出てきたロボッターがカギとなるひみつ道具かと思いきや、予告を見るにどうやら今回は最強チートの呼び声も高いあらかじめ日記。
はてさて今年はどんな話になるのか、期待して鑑賞です。

およそ4万年前、現在のドイツにあたる場所に、宇宙から謎の物体が墜落する。
中には女の子の赤ちゃんが入っていたー。
現代、学校の音楽室では、児童たちが演奏会に向けてリコーダーの練習をしていた。
そんな中、一際外れた音を出しているのは、やっぱりのび太。
のび太をクラス中がからかう中、音楽の先生はドイツで発見されたリコーダーの起源とも言える世界最古の楽器のことを紹介する。
帰り道でもスネ夫とジャイアンにリコーダーのことをバカにされ、音楽の授業が嫌になってしまったのび太は、ドラえもんが隠れて使っていたあらかじめ日記を使い、音楽の授業、ではなく音楽そのものをあらかじめ無くしてしまう。
次の日、日記に書いた通り音楽の授業がなくなるだけでなく、町中、世界中から音楽が消え、人々の不満が噴出する。
ドラえもんが日記のページを破いたことで音楽は元に戻るが、のび太はリコーダーから変な音しか出せない。
一人川辺で練習をしていると、どこからともなく少女が現れ、のび太のリコーダーを笑いつつも、音色に合わせて美しい歌声を披露する。
別の日、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンと一緒に練習しているところに再び少女が現れる。
ロボッターで動けるようになった人形たち、ムードもりあげ楽団と一緒に音を響かせていると、草陰からロボットのチャペックが覗いていた。
その日の夜、何者かから学校の音楽室に呼び出されたのび太たちは、音楽準備室から宇宙に飛び出し、人工衛星“ファーレの殿堂”に導かれる。
そこにはチャペックと、ミッカと名乗ったあの少女がいた。
彼女たちは、遠く離れた惑星ムシーカの出身で、滅びゆく星から脱出し、ファーレ(音楽)を求めて地球にたどり着いた音楽の民の生き残りだった。
チャペックはのび太たちのことをムシーカの絵本に出てくる音楽の達人“ヴィルトゥオーゾ”として歓迎し、エネルギーでもあるファーレが不足して機能停止になったファーレの殿堂を復活させようとしていた。
ドラえもんの道具でのび太たちは楽器の分担を決められ、パーカッションのしずかちゃん、バイオリンのスネ夫、チューバのジャイアン、そしてリコーダーののび太の演奏でファーレの殿堂の機能を取り戻していく。
しかし、ファーレの殿堂と地球には、宇宙に潜む捕食生命体“ノイズ”の脅威が近付きつつあった。
果たしてのび太たちはノイズからファーレの殿堂を、地球を、そして音楽を守り切ることができるのかー!

ここにきてまた新たな挑戦を仕掛けてきましたね、ドラえもん!
まず個人的な思いもありますが、どれだけ凝ったオープニングアニメーションを用意してきても、思い出深いのび太の「ドラえも〜〜ん!!」→テレレテレレ♪に勝る始まり方は無いんですよね。
まぁそこは最近のテレビシリーズで星野源の『ドラえもん』がOP曲の時期がしばらく続いていて、誰もが知っていてかつ沸き上がるOP曲というのが新ドラになって以降生まれていないとも言えますからね、新ドラと言っても声優を一新してから来年でもう20年経ちますけどね。
しかしそう思っていると終盤で不意に激エモサプライズがあるので油断できませんよ、まったく。(褒め)

話の導入として今作ではあらかじめ日記が使われたわけですが、そもそもあの道具は未来を改変するもので、他作品の導入で使われるような宇宙や未開の地、異世界に繋がるでも、のび太たちが大冒険に出るきっかけになるひみつ道具でもない。
ということで違う星の住人から招待を受けるわけですが、考えてみるとそんな風に巻き込まれる形で映画ドラえもんが始まるというのはなかなか無い、というかほぼ初めてなのでは??
しかも、割とすぐにあらかじめ日記がきっかけのごたごたが解決したなと思いきや、まさかというかドラえもんという作品のことを考えると当然ですが、終盤にフリがしっかりと効いてくるのだから油断できませんよ、まったく。(2回目)
あと名前忘れましたが時空転送なんちゃらーも、すぐにフリを回収したのではなくそれをミスリードにして後からちゃんと壮大に回収するという徹底ぶり、さすがです。

話の流れとしては、音楽の演奏技術がレベルアップ感覚だったり、ファーレの力で殿堂の機能が復旧して移動可能エリアが広がっていくなど、RPG要素が前面に押し出されていたように感じました。
ノイズに対してファーレの殿堂にいるロボットたち全員、現在の地球、はるか太古から紡がれて続けてきた人類史が奏でる音楽全部で立ち向かっていく感じも、なんだか御伽話のようでしたね。
しかしそれでもお子様方を楽しませるだけでなく、おそらく『ブリキの迷宮』以来約30年ぶりに作中でドラえもんが故障して、大人もヒヤヒヤするような作りに仕上げてくるのだから油断できませんよ、まったく。(3回目)

登場キャラクターについては、ミッカのようなロリキャラだけでなくチャペックのようなショタキャラまで、まさに老若男女に愛される造形をしたゲストキャラでした。
のび太たちメインキャラの作画も、劇場版シリーズらしいというよりも、普段のテレビシリーズっぽさ、なんならちょっと前の作画の雰囲気で、懐かしさを感じるようなものであった気もします。
また、登場してくるロボットたちは藤子先生が生み出したゴンスケを彷彿とさせるものであったり、ムス子が登場していたりと、藤子先生生誕90周年記念に相応しい登場キャラクターばかりでした。

今作で最重要となる音楽については、『地球交響楽』の名に恥じぬ完成度の高さでした。
映画音楽については色んな単語があって判別がつかず使い方が合ってるのかも怪しいのですが、劇伴、BGM、SE、セリフ、歌声などのあらゆる音を全て合わせて、シンフォニーとして一つの音楽に仕上げてきていたように思います。
そこにアニメーションらしいキャラの動きも乗っけてきているのだから、自然と完成度も高くなりますよねって。

最後にこれも毎年恒例ですね、来年の作品予想。
エンドクレジットには絵で描かれた魔法使い姿のドラえもんとモン・サン・ミシェルのような街。
最初『夢幻三剣士』っぽいかな!?と思いましたがどうやら舞台は現実世界っぽい。
果たしてどんな作品になることやら、今から楽しみです。
Jun潤

Jun潤