昨今亭新書

映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)の昨今亭新書のレビュー・感想・評価

1.3
去年よりはいくらかマシだろうか。
OPの映像とミーナ周りの物語、それからクライマックスのトリックは良かった。

しかしそれ以外は今年も全く楽しめず。私の新作ドラえもん映画に対する、既に下がり切った期待値の更に下を行くような内容だった。以下、大きく2点に分けてその理由を考察する。

1.テーマとの相性の悪さ
今年のドラえもん映画は「音楽」という、必然的にではないにせよ、子供向けの作品に馴染みやすいテーマを採用していた。

そして実際に、本作は歴代のドラえもん映画の中でもかなり対象年齢の低い作品だったというのが私の印象である。
あくまで体感でしかないが、多くのドラえもん映画が小学校低学年〜中学年を主な対象としている(ように思う)のに対して、本作はアンパンマンを卒業したての未就学児を主なターゲットとしていたのではないか、それくらいの違いが見受けられた。

もし本当にそうならば、私のようなオールドファンが楽しめなくても当然だし、そういう製作陣の方針にあれこれ言うつもりは毛頭ない。

ただその一方で、本作を観たことによって、前作『空の理想郷』と共通する、映画の作り方のレヴェルにおける問題も浮き彫りになってきた。そしてこの点こそが、F先生原作の作品に対して近年の作品が明確に劣っている点だと私は考えている。
その点について次に述べたい。

2.「未知の世界」から「テーマパーク」へ
本作の主な舞台は「ファーレの殿堂」という、空中に浮かぶ小さな人工島であった。そして前作の舞台もまた、空中に浮かぶ理想の国「パラダピア」だった。

これら製作陣がゼロから作り上げた舞台、いわば「テーマパーク」をドラえもんたちが訪れ、その場所の楽しみ方や生活文化に現状の問題点、更には後の伏線となる仕掛けまで、全てを懇切丁寧に説明し尽くす。たっぷりと時間をかけて、ようやく敵と対決する準備が整うも、敵役の脅威にも対峙するのび太らの勇気にもどうにもリアリティがない。物語全体がテーマパークの中でのことだから「世界を救う」という言葉も軽く聞こえるし、舞台設定の説明に時間を割かれるせいでゲストキャラとの友情の描写も不十分。その軽さを補うかのように、クライマックスでこれでもかと「言語化」された長台詞が挿入されるが、もはや良く言って御涙頂戴、悪くすれば失笑ものだ。

言いたい放題に悪口を書いてしまったが、これが私にとってのドラえもん映画の現状認識だ。そしてその最も根本的な理由が、先に述べた「テーマパーク」化にあると私は考えている。