割と良かった。吉岡睦雄がシャベル片手に橋を渡る場面のロングショットのワンカットが素晴らしい(カット冒頭のガードレール下から道路へのシャベル放擲も)。疲弊した身体を引き摺るように歩く姿が徐々に背筋が伸び、軽快に走り出す。電車の存在は冒頭から映り込んでいたが、移動撮影による欄干と背景の鉄橋の移ろいが思わぬかたちでそれを反復する。
小日向星一の首をねじ曲げるように頭部を左に傾ける姿勢がすげー良かったな。小日向はじめ、天野はなや『CURE』まんま過ぎるレストランでの騒動など、人間が倒れる様子が多く映る中、吉岡睦雄は橋を渡る場面もそうだが、丸まった背中や傾いた姿勢を正す様子が何度も捉えられる。料理教室で腕を広げて背中を伸ばす動作はわざとらしさを感じたけど、終盤の玄関前で丸まった背中がスッーと伸びていく様子は不可解な自然さがあって良かったし、ラストの家の前の道路から家の中へ戻る時の歩き方の真っ直ぐさも不気味だった。
