矢野竜子

チャイムの矢野竜子のレビュー・感想・評価

チャイム(2024年製作の映画)
4.0
他人という得体の知れない何かについて、45分。
ある作家がこの世には愛が溢れていて
だからこそ繋がりあえる他人は
素晴らしいと説いたとしても
黒沢清はこの世には不安、恐怖が溢れていて
だからこそ他人はよくわからず恐ろしいと
いくつになっても説き続ける。
そしてそれは1番近しい他人である家族、
家庭という場でさえも例外ではないのである。
他人という存在は不安を和らげるのではなく
徹底して不安を媒介させて人々に広めていく
存在として描かれる。
若手の三宅唱監督が他人であんなに優しい作品を
作り上げた一方で
他人でここまで恐ろしい作品を作るのは流石。
イッちゃってるのに
突然まともなことを言ったり
まともな反応をしたりするのが
狂ってるのか狂ってないのかわからず
トビーフーバーみがあり怖いが、
とっくにいつの間にか狂い出している
世界が1番恐ろしい。
チャイムはその世界からの呼びかけであろう。
のっぺりしたデジタルの画も良くて
フィルムとはまた違った
不安感を画面に定着させているように思う。
黒沢清作品はいつも不味そうなご飯食べてるのも
好きだけど、今回は主人公が料理教室の講師で、
どんな物が出てくるんだろうと思っていたら
ソーメン食べていて案の定不味そうで笑った。