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チャイムの0000のレビュー・感想・評価

チャイム(2024年製作の映画)
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なんでも自由に作っていいと言われてこれ作るのがさすがキヨシというか、やっぱりキヨシというか、シンプルに狂ってる。勿論いい意味で。もしくは天然か。勿論いい意味で。

主人公以外のセカイが狂っててその理由がわからない、あるいは主人公だけが狂っててそこに理由が見出せないというのはよくあるけど、この映画の、みんな淡々と意味なく狂っててそれだけというのは未だかつてない新しいリアリティを提示し得てる。『キュア』の延長上ではあるけどあれともしっかり違うものになっていて。よりベケットとかブニュエルとかの領域だけどもっと今っぽくて。

ロケの選択がめっちゃよい。

尺の中途半端さがもったいない。もっとも、作り手側としてはいちばん自由に無駄なくやりたいことだけやるってふうに突き詰めたらこのくらいの尺に収束するのだと思うけど、見る側としてはやっぱりそれだとちょっと物足りない印象が残るボリューム感になってしまう。体感的に。B級映画尺60分だったらもっとよかったのにと思ってしまう。

吉岡睦雄主演っていうこと自体はいいんだけど、この内容このキャラクターだといかにも感ありすぎてあんまり魅力的に思えない。

その位置にそんなスルッと刃物刺さらんやろ、とかの肝心な部分での(普通は刺さらんのがスルッとっていうのをあえてやってるのだろうけども)リアリティ感覚のズレによる興醒め感もあったり。

NFTによるデジタルアート販売のようなかたちで映画作品を扱うという、この作品の所有権を販売する配信プラットフォームの試みは、今のところ、ステマ的な嘘過大評価のレビューや口コミを生み出して作品の価値や良し悪しの混乱、混沌、退廃に繋がってしまうのではないか、といったようなよろしくない流れを予想してしまうけども、どうなるのかなーって感じ……。

https://roadstead.io/interview

↑このインタビューで黒沢清は「本物」というテーマでとてもいいこと言ってるんだけど、果たしてこの映画の評価や価値という外側の部分で何が本物なのかわからなくなってしまうのではないかという皮肉めいた事態があり得る……。みたいな。知らんけど。
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