正直で誠実すぎるがゆえ惜しいボブ・マーリーの伝記映画。彼のキャリアの全てではなく、1975〜1978年を描き、ボブが"One Love”にたどり着くまでを追う。
本編前にボブ・マーリーの息子であるジギーマーリーからのコメントが挟まっていた。プロデューサーにはジギーと本編でも重要な役として登場するリタマーリーが名を連ねている(Plan Bのブラットピッドもエグゼクティブプロデューサー)。その製作背景から、今作はボブの家族が主軸となってストーリーは進む。
ボブを放った父へのトラウマ、リタとの愛情、息子・ジギーとの語らいなど家族ドラマに見どころは多いし、グッとくる。
反面、「音楽」伝記映画としては物足りない。スマイルジャマイカコンサート→ロンドンをはじめとしたヨーロッパでの活動→ジャマイカ凱旋、ワン・ラブ・ピース・コンサートが今作の構成であるが、コンサートシーンに関しては、迫力不足が否めず、ラストではいよいよ!というところで終わってしまう。『Exodus』制作のエピソードやウェイラーズサイドの描き方が興味深かっただけに、ライブシーンの作り込みがもったいない。
序盤で起こる襲撃事件のシーンは演出にキレがあった。が、その後はボブを誠実に描きすぎた結果、バカ真面目な演出が続いてしまう。映画としては魅力が半減してしまっている。