ゆずきよ

アントニオ猪木をさがしてのゆずきよのレビュー・感想・評価

アントニオ猪木をさがして(2023年製作の映画)
3.0
父の影響で幼少期からプロレスと触れ合ってきました。
父はアントニオ猪木の大ファンで、何度も古いビデオテープを一緒に見せられていたのを覚えています。
ただ私の世代は大晦日に総合格闘技やキックボクシング(K-1)をやっていた格闘技全盛期。
周りで格闘技を見ているという子はチラホラいるもプロレスを見ているという子はいませんでした。
私も徐々にフェードアウトしてしまいましたが、プロレス熱が再熱したのは3年くらい前。
きっかけは特にありませんし、とは言っても会場にまで足を運んでという訳では無かったので、ネットで動画を見たり近くに来た時に行けたら良いなくらいです。
それこそ小学生の息子と私の父とで一緒に行かせてあげたいなと。
そんな矢先に父の急逝。
その数日後には日本プロレス界の化身とも言えるアントニオ猪木の逝去。
私の中でのプロレスという存在2人が相次いで亡くなってしまったのです。
そんな個人的な想いも持ってこの映画を観ます。
棚橋が社長になってオカダが退団というタイミングもあったのかも知れません。

物語は、日本プロレス界の立役者であり象徴ともいえるアントニオ猪木の功績をゆかりのある人物のインタビューを交えながら辿ります。
登場するのはプロレス界からはオカダカズチカ、棚橋弘至、藤波辰巳、藤原喜明など。
著名人からはくりーむしちゅー有田哲平、講談師の神田伯山、俳優の安田顕、写真家原悦夫など。
原悦夫はアントニオ猪木を撮り続けたという事で有名な写真家さんです。
各個人がそれぞれの猪木への想いを語ります。
始まりはブラジルの農園から。
ファンの方はご存知かと思いますが猪木の故郷です。
私はリアルタイムでは勿論無いですけど、懐かしい映像や写真を見て胸が熱くなりました。
と思いきや急なドラマパート。
正直困惑。
確かにインタビュー映像だけでは画面が持つのかなとは思っていましたけど、急な展開に驚きを隠せません。
その内容もまたチープで、全部で時代に分け3回あるのですが、確かに当時はこんな感じだったのかなと知るには良いにしても必要かな?
特に2回目の内容が私的にはかなりキツかったです。
最後まで見るとそういう事かと納得する部分はあるにしても、うーんどうだろう。
ただインタビュー映像だけで進めると確かにダレるのはダレるし、途中からこれNHKの特番でも良いんじゃ…と思ったのは否定出来ません。
個人的に良かったのは神田伯山の巌流島語りです。
やっぱりお話が上手い。
神田松之丞時代からたまにラジオを聴いていて、人間的に問題はあるにしてもやっぱりプロだなと思っていましたが流石です。
有田哲平はプロレス系のYouTubeでもそうですが、本当に好きなんだなという語りや動きで好感がもてます。
各々のインタビューも詳しく無い人がアントニオ猪木の偉大さを知るには十分な映画でした。
とは言ってもアントニオ猪木の正の部分に焦点を置いた作りなので、負の部分を知っているとより楽しめます。
エンドロールまでしっかりと作り込まれていて、エンドロール後の演出はグッと来ました。

私の様なにわかファンは兎も角、プロレスファンからは嫌われそうな映画だなというのが正直な感想です。
多分色々と権利の関係でしょうけど、この試合が写真でこの試合が映像なんだみたいなのもありましたし。
映画としても中途半端でドキュメンタリーとしても中途半端になってしまったのが残念でありましたが、観なくて良かったというほどでは無いです。
それこそ映画では無くNHKとか民放深夜とかでやっていたらもっと評価された作品だったのでは無いでしょうか。
個人的に良かったのは、タイトルと今推している若手海野翔太が出ていた事。
棚橋からの期待度が伺えますね。
まぁもう少し試合内容も頑張って欲しいですがまだ若いので。
あと私が子供達を部活や習い事の試合へと送り出す時に『最初から負ける事を考えるな』と言っていたのは猪木の言葉だったのかと今更知りました。
きっと幼少期に父と見た映像が残っていたか、父が私に言っていたのでしょう。
その言葉だけが私の中へ強烈に残ってしまい子供達へ伝えていたのです。
私の子供達はアントニオ猪木を『良くモノマネされるなんだか顎の長い人』くらいしか認識していなく、バラエティの影響でプロレスラーと言えば滑舌と膝が悪い程度にしか思っていません。
でもこういう言葉だけでも一人歩きして生き続けていくのでしょう。
それとこの映画には関係無いかも知れませんが、スターダムという団体で長らく無勝利だった月山和香が試合でようやく初勝利した話を私とした時に、中学生の娘は頑張ろうと思えたそうです。
世間からはなんやかんやと言われる機会の多いプロレスですが、どうか色眼鏡で見ずにそこから何か感じ取って頂けたらと思います。
ゆずきよ

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