このレビューはネタバレを含みます
東京国際映画祭のアジアプレミア上映。
予算はそれほどかけられていないのだろうが、濃い映画であった。
第二次世界大戦直後が舞台の映画だが、「復興」とか「希望」とか、そういうものからは少し距離を置いたもっと言葉にできないものについての映画である。
音が特徴的（しかし少しわざとらしい）で暗い場面が多いため映画館で観ることを勧める。
前半は場が固定されている。襖が趣里演じる女性の心を表現していることもふまえて、演劇的な場になっており、映像ではなく舞台上で表現した方が良いのではないかという気がしてくる。
後半は打って変わって外に出る。しかし、はっきりとしない世界は続いている。「坊や」も何を目的に歩いているのか理解していない。
最後の最後にやっと映し出される闇市の風景は、「坊や」が少しずつ世界を理解しはじめていることを表しているようだった。
上映後のQ&Aセッションでは、塚本監督が演出方法についていくつか問われていた。登場人物たち一人一人にあるPTSD的な症状や印象的な目の演技について、かなり話し合いや演出がなされたのではないかと思われたが、実際には照明など装置の修正は細部に至るまで行うものの、演者に対する干渉はあまりしないと言う。
この映画に限ったことではないが、日本映画だが、英語字幕がついているのをみると、他の国の映画にみえる不思議。
