ボロボロの居酒屋（跡と言ってもいいくらいだ）のみが舞台の前半部は、戦争映画というよりは大映の撮影を想起する。おそらく低予算ゆえの粗さは見えるものの、端正なショットが撮られていたと思う。矢継ぎ早のカット割も経済的かつどこか未練を断ち切るような趣を感じる。
後半は外に出てロードームービーになり、牧歌的な瞬間もあるがやはり重たくのしかかってくる。統合失調症なのかPTSDなのか、ともかく存在しない足音が聞こえてしまってポコポコ何度も頭を叩く男を捉えたショットが忘れられない。そういう人の挙動が目に入って、悪意はなくともどうしたって不気味に思えて脳裏にこびりついてしまうことって誰しもあると思うんだけど、これはその罪悪感を想起させるというか…。怖いショットとして享受してしまったし、そう撮られていたとも思うが、どうにも後ろめたさが残る。そういう余韻を残してくれる。
