戦後日本に漂う無力感を埋め合う様に寄り添う人々。恐怖や狂気を必死に抑えながらある者は擬似家族を、またある者は共犯関係を築きながら〝戦後〟に踏み出そうと踠いている…
闇から解放されるため仮初の関係に縋るしかない人間の精神をありのままに見つめ、そこに差す僅かな光を捉える。凄い！
体を売りながら生計を立てる女性と、そこにやってくる孤児、そして復員兵など登場人物はごく少数ながらジワジワと心の傷が歪みと共に露になる様子が恐ろしいし、人間を保てなくなる、殺し合いだけではない戦争の本質に迫っていた。
そんな狂気の世界を見つめる少年の澄んだ瞳に人間としての灯火が宿ることを祈りたくなる…そんな映画でした。
前半の室内劇と、ある旅を映した後半の2部構成で展開しながらも孤児の少年がそのどちらにも登場し物語を一本に繋いでいる。
そして終わっていない戦争を印象付けるある道具が闇からの解放、人間として生きるための象徴として存在感を放っていた。
そんな混沌とした世界で藁にも縋る極限の〝生〟を演じて魅せる趣里と森山未來が素晴らしかったし、孤児の少年を演じた塚尾桜雅くんの濁りなき存在感にも光を感じた。
最近はクセのある面白い役も多かったけど、なんか久しぶりに狂気をはらんだ趣里ちゃんに触れた気がして、やっぱ凄い俳優さんやな〜って改めて魅了された！
