ノラネコの呑んで観るシネマ

ほかげのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
4.8
凄味のある映画だ。
塚本晋也が、「野火」「斬、」に続いて三度戦争を描く。
舞台は終戦直後の日本。
小さな居酒屋で体を売る趣里と、傷を負った帰還兵の森山未來。
いつまでも戦争が終わらない大人たちの哀しき姿を、戦災孤児の少年の真っ直ぐな視線が見つめる。
前半は演劇的な密室劇で、後半はロードムービーと変幻自在。
仄かな希望を、何処から聞こえる銃声が打ち砕く。
静かに迸る情念を感じさせる趣里が素晴らしく、「生きてるだけで、愛。」に並ぶ代表作となった。
低予算を感じさせない、美術の作り込みも見事で、とてもシンプルな作りだが、映像が恐ろしく雄弁だ。
本作と「ゴジラ-1.0」「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」はモチーフ的には非常に近いのだが、ジャンルも表現手法もアプローチも全く異なるのが面白い。
ここまで来ると、何気に「窓際のトットちゃん」が戦争の時代をどう描くか、期待したくなって来た。
ブログ記事:
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