KeiRalph

ほかげのKeiRalphのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
4.1
今や塚本監督のライフワークとなった、戦争をテーマとした作品。今回も、鳩尾にずしりと重くのし掛かりました。

最近見たせいで、比べちゃいかんと思いつつ、どうしても、似た時代設定を描いた、例のマイナスなんとかが頭を掠める。あちらは戦争そのものが主たるテーマではなく、あくまで戦争の幻影を打ち倒す事が目的なのだから、過去の事はともかく、やるしかねえじゃんね!といきり立つこと一択なのは重々わかります。分かるんですが、やはり今作のように、戦争に抗えず、仮に生き残った所で、例え戦争の当事者であろうとなかろうと同じ苦しみから脱却する事が出来ない無限地獄を見ると、やはりマイナスなんとかは40年前くらいの戦争映画のフォーマットに基づいて作られたもののように感じてなりませんでした。

時代背景やメッセージ性の拘りは当然見るべきものがあるとして、作品自体の見せ方も良かった。前半はほぼ居酒屋内で行われるが、全体に赤褐色の室内、ほとんど暗がりのライティング、何もないカウンターなど、つげ義春の作品を見るかのよう。途中、畳の部屋に空襲で焼けた焦土のミニチュアが、ディストピアのように広がっていくシーンは悍ましく、見るものの脳裏にも焼き付きました…

また、戦地から戻った傷痍軍人の身体や心の有様、そして夫や子を亡くし、天涯孤独となった女性(朝ドラヒロインは後発でしょうが、趣里さんはこちらもアタリ役!)が生きるための手段として身体を売る事他ないなど、末期的な戦後の有様を包み隠さず曝け出している所も、果たして戦争とは何かを伝える事にまっすぐな塚本監督の姿勢が伺えます。

子役の男の子、当然撮影時は最新のケアを施していたと思われますが、過酷な役所を演じきっており、素晴らしかったです。闇市のシーンは泣いちゃうわ…
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