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ほかげのmizuのレビュー・感想・評価

ほかげ(2023年製作の映画)
4.6
・キャッチに「戦争が、終わったんだ」とある。しかし、だれがどう見ても「まだ戦争は終わっていない」と思う作品に仕上がっている。傑作である。

・そもそも、「戦争」が一度起きた以上、「戦争が終わる」ということはあり得るのだろうか?親を失った子どもは、身体を欠損した男は、心を壊された人は、焼けた大地や、失った家財は、いつになったら「戦争が終わった」と誰にも後ろ暗くない気持ちで言えるのだろうか。

・ガード下の暗闇の中で、戦争で大切ななにかを失った人々が集まっていた。ただ、五体不満足の状態で時間が経過するのをじっと待っていた人々がいる。傷痍軍人、と調べると出てくる彼らを私たちはGoogleの画像検索ですぐに見つけることができる。さあ、では彼らのひとりひとりはその後どう暮らしただろうか。調べても調べても、出てこない。絶えず壊し、作られていく東京の街のなかで思う。この渋谷や上野で、すさまじい暗闇があったことを。彼らの中で戦争が終わっていなかったことを。
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