藻尾井逞育

僕と幽霊が家族になった件の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

僕と幽霊が家族になった件(2023年製作の映画)
3.5
「この世で同性婚が可能なら、あの世もそう。若いのに古くさい。固いこと言わないで」

うだつの上がらない警察官の青年ウー・ミンハンは捜査中に落ちていた祝儀袋を拾うが、冥婚の習わしで、若くしてひき逃げ事故で亡くなったゲイの青年マオ・バンユーと結婚をしなければならなくなってしまう。そのことに頭を悩ませつつも、ある事件の解決に向けて奔走するウー・ミンハンだったが……。

道端で赤い封筒を拾った者は死者と強制的に結婚させられてしまう、という"冥婚"の風習をモチーフにした作品です。"冥婚"は台湾だけではなく日本の一部地域にも今なお残る風習だそうです。監督のチェン・ウェイハオさんは、都市伝説や台湾各地に伝わる魔物・魔神仔(モーシンナア)を扱った「紅い服の少女」を手がけ台湾ホラーのブームのきっかけを作るなど、ずいぶんホラーの引き出しの多い方ですね。でも"冥婚"を扱ったホラーは先に「屍憶-SHIOKU-」などがあるので、今回はおもいっきりコメディの方に舵を切っています。同性愛をからめたこの振り幅もすごいですね⁈"冥婚"をモチーフにしながら、警察の麻薬捜査や「インファナルアフェア」ばりの潜入内通を入れてみたり、LGBTQ、ゲイに対する差別偏見、職場での女性差別、親子の確執、果ては環境保護や動物愛護の問題まで盛り沢山に詰め込んで、それでいて重すぎずテンポよくさばいているのはお見事です。
私はこの映画で"ノンケ"という言葉を初めて知りました。基本ゲイの方が使う言葉で、相手に対して"ノンケ"という時には、相手がゲイではないということを意味するだけではなく、もうこれ以上自分は相手の方へは進めないことを認める悲しい言葉でもあるようです。マオマオがミンハンに対して時折り見せる寂しそうな表情がよく表れています。

2024/04/03
台湾加油!