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ナポレオンのCinemanのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
3.8
これは..フランス悔しいだろうな笑
自分たちでこのクオリティーのナポレオン撮りたかったろうな。

ロマンチックなナポレオン。
ヨーロッパ的な静謐なロマンチシズムと、ハリウッドお得意の動的アクションの迫力...バランスが最高だった。

リドリースコットらしく、ハリウッドよりむしろヨーロッパ寄りの淡々とした運び、かつヨーロッパよりカラッとしてるのがすごく良かった。
戦闘シーンもダイナミズムと同時に、細部の詳細が詰められているのが素晴らしい👍
このバランスの良さは、ちょっとレッド・クリフ思い出した。

冒頭の、アントワネットの斬首を見送るナポレオンという場面なんて、すごく映画的でグッとくる。これは歴史家の方々は、ウッとなるはずだよね笑

ナポレオンのロマンスを大胆に取り入れながら、性愛のロマンには陥らない、また頼らなかったのもすごくいい。
淡々とした中での感情描写が上手い。例えば、浮気でジョセフィーンを叩き出した後とか。一晩の朝までの会話で、ナポレオンの幼少期のマザーコンプレックスや2人の力関係の微妙さを描き出す。
これ、フランスで撮ったら、ベッドシーンで表現しそう笑
そういうところ、ハリウッドの方が、よほど上品かもしれない。

さらに、ナポレオンを突き動かす動機もあまり描き過ぎてなくていい。得体の知れない執念であって複合的な感情だから、余白や余地を残しているのもあり。政争や彼の思想にこだわりすぎてないのが潔い。歴史映画としての評価はともかく、リドリーの映画としては正解。

また、映画の締めくくりが、ナポレオンの戦争に巻き込まれた死者数に提示だったのも新鮮。ナポレオンの生涯を描く映画の締めなので、あらゆる閉じ方の可能性があったと思うけど、本編がナポレオンの人物伝である中で、こういうふうに周りへの影響の負の面が最後を占めるのは、バランス感覚だと思った。
昔から不思議だったのが、近現代戦だと、戦争の犠牲者の悲惨がクローズアップされるのに、中世とかだと、あまり犠牲や戦争の倫理が問題にされないこと。そういう意味でも、この年代の戦争を描いて、犠牲者を最後に祀るのは新鮮だったかも。
これに関していうと、この時代の戦争って、職業軍人の儀式のような側面があるのも面白かった。例えば、英軍のスナイパーがナポレオンを討ち取れる体制なんだけど、戦争のしきたりでは、戦場での交戦前に敵将を騙し討ちするのはNGというシーンとか。

ホアキン・フェニックス、ジョーカーといい活躍ぶりが見事。
短いカットでも存分に魅力がある彼の力量を思い知った。
そして、ルパート・エヴェレットやっぱりいいね。出てくるのを知らなかったので、嬉しい驚きだった。
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