Dolby Cinemaで鑑賞。公開初日で映画の日という事もあって席はそこそこ埋まってました。
映画「ナポレオン」といえば思い出すのが1927年にアベル・ガンスが製作した無声映画の大作とスタンリー・キューブリックの幻の企画。
アベル・ガンス版は1981年にコッポラがプロデュースした音楽付きのバージョンを深夜のテレビ放送で観たが20年代とは思えない大胆な編集と主演俳優アルベール・デュードネの鋭い眼光が印象的で、本作の一切笑わないホアキン・フェニックスの演技で彼を連想した。
キューブリックの企画は相当入念な取材が行われたが結果は資金調達に失敗して同時代を描いた歴史映画「バリー・リンドン」に形を変えたという。この中で描かれた中世の戦争描写は特に本作後半のワーテルローの戦いに大きく影響していたように思う。
リドリー・スコットの映画は初期の「エイリアン」や「テルマ&ルイーズ」から女性が活躍する作品が多かったが、ここ数年は家父長制に振り回される女性が実は男性の行動に影響していたという作品が目立つ気がする。
ナポレオンの事は高校の世界史でなぞった程度にしか知らないのだけど戦地から妻のジョセフィーヌに綴った書簡は実在したらしく、子供を孕らないからと離縁したり散々な目に合わせながらも相当強く想っていたらしい。
本作の音響はDolby Atmosで作られているが、砲弾飛び交う戦場描写はもちろん、おぞましい密談の場では蝿の羽音が強調されたり、室内シーンでは暖炉の薪の爆ぜる音が常にリアルに聞こえるなど環境音にも気配りが効いている。
しかし何と言っても印象的だったのがホアキン・フェニックスの鼻息の荒さ。
どんだけポーカーフェイスを装っても戦場で怯む気持ちやジョセフィーヌへの欲情が息づかいで丸分かりなのだ(笑)