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ナポレオンの1234のレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
5.0
これ以上何をお望みですか?

凄いものを見てしまった。

12/1初公開日ナイトに見てしまった。
そしてその足でいま大宮の伯爵邸で夜更かししながら、興奮のまま書いてるので、大分勢いで書き残します。

1日の映画サービスデーという僥倖。

とんでもないっすよ、
特に最後のワーテルローの戦いは、
間違いなく映画史に残ります。

エキストラ8000人の合戦って、
もうほんとの戦争状態。

しかし、引きの画角は紛れもなく、
美術家志望だったリドリースコットが、
そりゃ穴が開くほど眺めたであろう、
教科書に載ってる絵そのものなんだから、もう1800年代のフランス🇫🇷そのままなんですよ。

戴冠式のシーンのまあ、外からの日差しだけで撮影されている、あの冷めた美しさ…
(じっさいはフロントライト使ってるようですが、日差し以外は全く感じられません。)

当時に戴冠式に参加していたら、絶対こういう光景だ、と思える一人一人のリアルさ…

この映画は、人の上に立ってる人たちが、
そんな日差しのように、
いかに単なるちょっとした偶然に頼ってきたか
そしてそのちょっとした偶然によって、
結果300万人が死んだ、
そのリアルさを描いています。

まあ下衆なんです。一人も尊敬できそうな人が出てこないんですよ。
歴史上「英雄」と謳われる人たちが、
ほんとにごくごく一般人なんです。

革命しかり、恐怖政治しかり、王政復古しかり、みんなみんな主役がどうみてもそこらにいる一般人なんです。
誰もが半径1メートルくらいしか見てなくて、歩兵は「肩をつけて進め!」と言われるだけでバタバタ死ぬし、太鼓は憂鬱に叩きながら頭吹っ飛ぶし、皇帝はスケベだし、ナポレオンもジョセフィーヌも自分しか見てないし…

唯一確かなこと。
最後に「300万人死んだ」と字が出て終わる、
この死者。

もしナポレオンが、別の奥さんを貰ってそこそこの地位に収まって生涯を終えていたなら、この300万人は死なずに済んだと考えると、ぞっとします。

ホアキンもヴァネッサも人間味の演出を抑え目に見えるのも、これはわざとですね。
(台本ある演技というより、二人をタイムスリップだけさせて、ほぼ直感で二人とも演じさせられているような気がします。)

英雄譚じゃないんです。
感動ものじゃないんです。
スペクタクルじゃないんです。

ただただ、わたしたちが生きてるこの日常も、
英雄の人生も、変わらないんだよ、
大事なのは、何に気づくか、
何を犠牲にしてるかに気づくことなんだ。
ほぼこのことだけを言いたいんですよ、
リドリースコットは。

この暖かい日常が、
一方で戦争がいま続いている世界の上に成り立ってる。
あなたはそこにリアルを感じれるか?
感じれない?
ならこの映画を観なさい。
って作ってるんです。

だから「思ったよりつまんなーい」「盛り上がりそうなとこまできてイマイチ」みたいな声が出るかもしれませんが、
それはわざとなんです。

絵というのは、全体を見て受け取るものだ、という
美術家なり損ないの監督の遺言を、
夜中に受け取って、
コーヒー☕️を飲んでいます。

何を迷うか。映画館にすぐ行ってください!
黒澤明が嫉妬のあまり墓から起きてくるんじゃないかってことが、スクリーンで起きてます。

(リドリースコット85歳って…
ナポレオンよりあんたが怖い)
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