レオン

ナポレオンのレオンのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
3.7
ホアキン・フェニックスが主演と知った時、悪い予感がしたが当たってしまった。 歴史物語は動くが、心は動かない・・。  過去のホアキンの出演作は10作ほど視聴してるが、演じる役が好きになったり、感情移入した事がないのである。 「ジョーカー」では、役が本人か!と思うぐらいに身を削っての 圧倒的存在感 でアカデミー主演男優は確実! の演技だったが、その熱演を超える狂気に当然好意を感じる役ではなかった。 
(「 her/世界でひとつの彼女」での主人公は唯一やや人物に魅力を感じたが)

本作のナポレオンも、戦闘時のずる賢さには特異な才能を発揮するが、稚拙な素行に好感や憧れを抱く存在ではない。
その妻ジョゼフィーヌを演じるヴァネッサ・カービーも、視聴した過去5作で、存在感はあっても好感を抱いた役はない。
すなわち、主演二人がそれほど魅力ある役を今まで演じてない役者というのが、私的な印象。

もちろん、当人の実像がそうだったから、それにピタリの役者を選んだのであろうが、そこはエンタメなのだからワンパートだけでも、もう少し生き生きとした人物像を演出して、こういう所は好きなんだが・・ぐらいに描いてもよかったのではと感じる。

まあ、戦闘時に自陣で指揮を執るだけでなく、敵中に自ら突っ込んで行く描写には感心するシーンもあったが、役の好感度が上がるほどには感じなかった。

が、戦闘シーンはさすがのスペクタクルで、戦争映画は山ほど見てるが、今作が唯一と言えるシーンも序盤にあった。


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それは、主人公が乗っている "馬" が被弾し、肉片が飛び散るシーンだ!  銃弾や弓矢が馬に当たり、血が噴き出す・・ぐらいのシーンは今まで何度も見たが、砲弾で爆発したかの様に馬肉が炸裂するシーンは衝撃だった。
(これぞ、CG技術を上手く使った実例と思う)

そして戦術そのものも、闇夜の奇襲や、氷上に敵をおびき出してから、砲撃でその氷を割り沈めるというシーンや、背を内にして何重もの鉄砲隊の円陣形を作り、死角なく敵を打ちまくる(これは敵のイギリス軍戦法)等、理にかなった戦法が見せ所になっている。

戦闘シーンそのものも、出兵する兵の数が増すごとに戦場が広く描写スケールも大きくなって、ワーテルローの戦いでは、エキストラがスゴイ数なのか(後に約8000人と知る)、CGなのか判断出来ないが、夥しい数の兵が激突する。 
が、トータルで4度の戦闘を描いているので、ひとつひとつが中途を割愛状態でのシーン展開で、やや消化不良なイメージになってしまい惜しい。

唯一、やや心の針が動いたシーンは、流刑されたナポレオンが勝手にフランスに戻って、フランス兵達に銃を向けられる場面。 丸腰でコートの胸をはだけ軍服を見せ「我が兵よ、我を覚えておらぬか!」と問いただし、敵意を喪失させ、再び自身の味方にしてしまうシーンは今作でたった一度の感動シーンだった。

全体的に戦闘が見応えあるも、ドラマパートのナポレオンがふざけているシーンさせ人の温もりを感じず、冷めて見えてしまい、淡々とした描写に感情は動かず、史実だけが流れている様に感じた。

まあナポレオンの伝記を読む代わりに本作を見た方が、印象に残るので歴史の勉強にはなるが、映画としては及第点よりややまし・ぐらいの評価に。
リドリースコットは、黒澤明の次に好きな監督であったが、近作は期待以上の出来にあらず・・。
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