ノラネコの呑んで観るシネマ

ナポレオンのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.3
なるほど、これはラブストーリー。
フランス革命後の恐怖政治の時代からはじまって、幽閉先のセントヘレナ島で没するまでの英雄ナポレオンの人生を描く。
アベル・ガンスは6時間半を費やしてこの男を描いたが、こちらは2時間40分とかなりコンパクト。
そのため彼の人生の中で、重要な事件や戦いを中心に抽出してゆくスタイルだ。
ただそれだけだと大河ドラマのダイジェストみたいになってしまうので、デヴィッド・スカルパの脚本はナポレオンとジョセフィーヌ、英雄と運命の女の関係を物語全体のバックボーンとしている。
象徴的なのが劇中で彼女がナポレオンに言わせる「私(ジョセフィーヌ)無しでは偉大になれない」という言葉。
だから彼女と出会ってナポレオンは出世街道を駆け上がり、不妊を理由に離婚すると転落人生を転げ落ちてゆく。
冷徹な軍事リーダーのナポレオンが、ジョセフィーヌの前だと、厨二病の男の子みたいなコミカルなキャラになっちゃうのも可笑しい。
ドラマの深みという点では、この尺では限界があるものの、ラブストーリーをベースに埋め込んだおかげで、二人の物語としては納得できるものとなっている。
しかし尺の兼ね合いもあってか、説明というものを全くしてくれないので、世界史に疎い人は予習が必須だろう。
知らないと、たぶん誰と誰が何のために戦ってるのかも分からないと思う。
リドリー・スコットの、一流の職人仕事を楽しめる一本。