「首」とどちらか一つをと言う制約の中、
（多分）こっちの方がストレートに大画面の迫力を楽しめると思い、こちらをチョイス。
事前にちょっとだけ世界史の復習をしてから鑑賞したけど、まあ、何も入れずに観ても迷子にはならない。「ハリウッド版西洋大河ドラマ」みたいな分かりやすい作りになっている。
大河ドラマになぞると、中盤の皇帝まで成り上がっていく様は、「豊臣秀吉」のようだったし、
エルバ島を脱出して、軍の手下をまた従えていく様は「西郷どん」みたいだった。
リドリースコット監督とホアキン・フェニックスのコンビなので、ナポレオンの人物像はかなり作り込んできたのだろう。
最初のテウーロンでの戦いでは、オドオドした感じさえ見れたナポレオンが戦争を重ねて、その功績によって地位を勝ち取ってからは、戦地での佇まいが威風堂々としてきた。ここらへんのリアリティはさすが！ホアキン！
イライラしたり、上手くいかなかったりした時の指先をカチカチさせる癖も、大物の中の小物感を見事に出していた。
エジプト遠征中に、妻ジョセフィーヌの浮気を知り、急きょ帰国したエピソードも興味深かった。
最初は妻の不貞を責めるはずだったナポレオンだが、いつの間にかジョセフィーヌに言いくるめられて、逆に反撃されていたあたり、他国との戦いだけでなく、むしろ、夫婦間の闘い（葛藤と愛）がこの作品のもう一つの見せ場になっていた。
成り上がり故に子孫を残してその地位を未来に繋げていきたいという思いの強さや焦りは先ほど例に出した豊臣秀吉とよく似ている。
こっちは、身籠らない妻を離婚するんだからさらにシビアだけど。
合戦シーンはどれも本当にお金と労力（馬も）をかけている。これだけで劇場で観る価値はある。
引き合いに出すのはよくないかもしれないが、最近、「合戦シーンが大迫力！」と評判だったあの邦画。まあ、CGはいいとして、毎回合戦最中にワイヤーアクションを入れ込むのは、、僕はしらけちゃうんだ。
この映画の真似はできるものではないけれど、本物の人や馬が走り、倒れていく様は、現在にナポレオンの生の戦いを再現してくれたと思う。（予告編で流れる氷湖での戦いは凄まじい迫力！）
そして、エンドロールに流れる戦死者のものすごい数の多さ。このとてつもない人命の重さを表すのに、CGをあまり使わず、実際の人や馬を集めてよりリアルな戦場を再現したリドリースコットの思いの強さを感じることができた。
ホアキン・ナポレオンは、狂気というより小心やこだわりみたいなものを多く表していたように感じた。
ただ、長いエンドロールが終わり、会場が明るくなっても
「大河ドラマ・ナポレオン・総集編」みたいな印象の薄さというか、ああっナポレオンってこうだったんだ、どっか落ち着いた鑑賞になってしまった感も。
