将軍“ナポレオン”の叙事詩。
配信作品の規模を超越したスケール感。
新解釈で紐解く英雄の波瀾万丈な生涯。
フランスでは一般的に英雄視されるナポレオンに対してリドリー・スコット監督は軍事的な快挙だけに焦点を当てて称賛はしない。暴力で行き着く先は空虚で孤独な最期だという自己解釈による反暴力への訴え。
共和政の実現へ蜂起する市民たち。フランス革命による封建的政治の撤廃。マリー・アントワネット王妃の公開処刑など喧騒を経て成る歴史的改革。その只中、軍人として戦果を挙げて出世街道驀地のナポレオン・ボナパルト。旧王党派との戦闘を武力で撃退してフランス軍事作戦の司令官に就任。私生活では未亡人であるジェゼフィーヌと出会い結婚。妻を溺愛するナポレオンだったが国外への軍事侵攻中にジェゼフィーヌの不倫疑惑が浮上。許可なく軍を抜け出し帰国する始末。軍事的な快進撃が続く反面、煮え切らず裏切られた失望や後継ぎが産まれない焦燥。愛するが故に思い通りにならず憎み合う皮肉な夫婦間の葛藤。離婚後も妻を想いロシア遠征からの帰郷。ワールテルローの戦い後、流刑先で回想する生涯。『フランス、陸軍、陸軍総帥、ジョゼフィーヌ...』
火薬を使った砲撃シーンは凄まじく単なるVFXメインのアクションより重厚感があって大興奮。撮影スケールや衣裳デザインが素晴らしくフレーム内をフル活用した映像美は視覚的な幸福感MAX。白馬に跨るホアキン・フェニックスが神々しく、ヴァネッサ・カービーの表現力は凄まじかった。さすがハリウッドと言わざるを得ません。作品の本質はシリアス傾倒だけど、流れる映像演出がカーニバル宛らで楽しかった。創作意欲が全く衰えないリドリー・スコットが元気だったので安心。
