メッチ

ナポレオンのメッチのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.7
英雄か?悪魔か?論点はそこではない。愛すべきものを愛した結果と愛しきれなかった代償。

革命が起きた時代に一躍英雄となった歴史上人物の作品を混沌とした現代に放つのは、何かしら監督自身に思い当たることがあるのでしょうか?
一般的にはフランスを良くしようと立ち上がった者でありながら、己の私利私欲溺れた哀れな英雄と描かれがち。
でも本作のナポレオンは、彼の奥さんだったジョセフィーヌへの愛が曖昧になってしまってから彼の敗退が続くような描かれ方がされている印象を受けました。歴史上人物の生涯を淡々と描くような映画ではなく、ジョセフィーヌへの愛を描いた映画だった気がします。

なぜ、そのような印象を受けたのか?恐らく、この作品をみる前に公開されていた『ハウス・オブ・グッチ』の影響が強かったかと思います。本作を公開するにあたって、みている側へ理解を深めるために公開した作品なのではないのか?と思わせるぐらい似た要素がありました。

『ハウス・オブ・グッチ』では、レディ・ガガ演じるパトリツィアが、アダムス・ドライバー演じるマウリツィオ・グッチに恋をして結婚をするも、革製品のブランド社グッチの経営に入り込むが故に旦那との心の距離は離れていく様が描かれていました。
本作は夫視点でも、かなり近しいものがあります。それは、妻に恋をして結婚をするものの、なかなか子供を孕ってくれないことに嫌気がさして、妻への愛が薄れていく。それと同時に戦に敗れて低迷ていく様は、自然と重なってみえてしまいます。

最後に、ポスターにも書かれている「英雄か?悪魔か?」と問われているかのようなフレーズ。これについて私には、正義でも悪魔でもないのではないのかと。
ナポレオンという人物は、妻を愛して幸せだった男であり、妻を最期まで愛しきれずに後悔した1人の人間に過ぎないと思いました。

【2023年ベスト9位】
メッチ

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