ひれんじゃく

ナポレオンのひれんじゃくのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.0
エンタメ系としては正直面白くないし水分制限しないと膀胱が限界を迎えそうになるほど長いので全集中の呼吸ができる映画館じゃないと観られない作品だと思った。配信だと飽きる気がする…………以下ネタバレ。
(世界史はほぼミリしらなのでちょっと勉強してから観に行った程度の付け焼き刃の知識で感想書いてます)
















マリー・アントワネットがギロチンにかけられる一連のシーンから始まるのがまず良かった。固唾を飲んで観てしまった。あそこ、思い違いな気もするけど服が青、髪と肌が白、引っ立てられる時に民衆から投げられたゴミで胸元が赤く染まることで色合いがフランスの国旗を想起させてウワすご………………😦となった。あそこの民衆の荒れ具合で革命の激しさというか王族に対する憎悪嫌悪が剥き出しになっててシンプルに怖かった。それだけ王族が酷い政治をしてたのだろうけども。

あとはもうとにかくナポレオンが無表情で耳を塞いでドカンドカン大砲をブチ込んでる全てのシーンが良かった。音楽の圧もそうだし映像美もそう。最初のトゥーロンの戦いの時点からあまりの音圧と迫力に思わず身が竦んだ。あそこから既にこの映画のナポレオンは小物です感が漂ってたんだけど、そりゃイギリスの大軍の中に突っ込んでいくとなると息も切れるし恐怖はあるよなあ。正直ジョゼフィーヌとの絡みが長いというかリドスコが注目したのはそこなんだなという冷めた感じがあったので、2人の関係性を取り去ると戦争の場面が目立つっていうのもあるけど。マジで色んな戦争がハリウッド品質の超美麗ビジュアルでお届けされるので、一瞬で有名どころの戦いの把握ができた。そこに関してはメチャクチャ教材としていいと思った。脳裏にこびりつく。ロシアに攻め込んだ時に相手の指揮官が有能で兵糧ごと街を全部燃やして補給を断つ作戦が取られたとギリギリ知ってたのであそこの大火圧巻だったな。王党派の市民に容赦なく大砲ぶち当てて爆散させるシーンとかエグすぎるもん。それでもってこれを実際にやったってのが狂気。

(少なくとも演出上では)ジョセフィーヌと離婚する際にナポレオンが書いたサインがタイトルのフォントに採用されていると分かった時、「あくまでジョゼフィーヌとの出会いと別れを主軸にナポレオンの運命の明暗を描くつもりなんだ」とちょっとがっかりした。マジで別れた後からの急降下ぶりがすごいし。幽閉先から舞い戻ってきた動機もあくまでジョゼフィーヌに会うためっていう描き方がされててなるほどとは思ったが……

そこ関係性の部分と戦争の部分にほぼ尺が割かれていたせいでなんでこんなやつにフランス国民とか部下はついていったのか感がすごい。軍略に優れてることとジョゼフィーヌが好きすぎること以外読み取りづらい。あとはまあ自分に有利なように事実を歪曲したりする面?があったことも理解した。(サーベルを返した時とか)(ジョゼフィーヌも多分軍人だった旦那は死んだと嘘をついてたわけなので似た者同士ですが……)

映画の前にちょっと勉強した程度で言うのもおこがましいかもしれないけど、権力の握り方は強引だったとはいえその後の治世で色んな政策を打ち出したのだろうし、宗教のいざこざをどうにかしようとしたと聞き齧っていたのでそこらへん全部省かれたせいでキャッチコピーで銘打っていた「悪魔か、英雄か」の英雄のくだりが分かりづらい。個人的にはほんとただの戦争大好き世継ぎクソ欲しいおじさんと化してたように見えたので。当時の人たちがなんでナポレオンを支持したのか、どこに魅力を感じたのかが省略されてたのでホアキンフェニックスの目が終始座っててヤバいことしかわからんかった。あとまあ困ったらとりあえず大砲撃っとけみたいなノリ???ナポレオンが奇怪な行動をとるたびに部下が(何やってんだこいつ……)って目で見てるの地味に面白かった。関係性が良かったことはうかがえた。エジプトでファラオのミイラにご対面したときとか面白かったな。あと会食の席で世継ぎができないことで喧嘩おっ始めた時。頭を抱える人とか天を仰ぐ人とかいた記憶があって思わず吹き出してしまった。

最後にこれは言っても仕方のないことかもしれないけど全編英語なのもなあ感。せっかくメチャクチャいいオープニングだったし戦闘シーン全部最高だし史実では負け確のワーテルローのところ(特に開戦してすぐ)で「あれ?この作品では何らかの改変が起きてフランスが勝つ世界線になってる???」と勘違いしたくらい鬼気迫ってたので言語が残念だった。イギリスと言葉が同じせいでちょっと緊張感がなくなる。ほんとこれ言っても仕方のないことだけど…………
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