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ナポレオンのumisodachiのレビュー・感想・評価

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.1


リドリー・スコットがナポレオンの半生を描く。

戦で出世していく若い頃から、島流しとなるまでをダイジェスト的に描いた作品。とはいえ、ストーリーの主軸となるのはジョゼフィーヌとの共依存ともいえる関係であり、英雄というよりも弱さを感じさせるナポレオン像になっている。複雑で屈折したキャラクターを演じさせたら天下一品のホアキン・フェニックスが好演(20代のシーンはけっこう無理があるけれど)

なんといっても、戦争シーンの迫力が凄い。『首』は寄りの画ばかりでダイナミックな構図がなかったことが残念だったわけだが、本作はそのフラストレーションを悉く解消してくれた。特に、大失敗したロシア遠征とアウステルリッツの闘い、そして王党派の民衆に砲弾を撃ち込んだシーンのインパクトたるや!これぞ映画と拍手したくなるほどの迫力で、素晴らしかった。

ただ、やはりダイジェスト感が強すぎるのと、ナポレオンの生涯やあの時代についてある程度の知識があることを前提にしているので、「はい、この間は脳内保管してね」「はい、誰が誰かは自分で判断してね」という感じでやや不親切設計。世界史の勉強で観るものとしてはちょっと物足りないかな。

ジョゼフィーヌとの関係を中心に据えているあまり、独自解釈に寄りすぎている部分や、完全に省略されている女性関係などもあり、けっこう偏りがあるストーリーになっているのも確か。ジョゼフィーヌ役のヴァネッサ・カービーは妖艶でかっこよくて良かったものの、そこをクローズアップするならばもっとしつこくやるべきだろうとも感じた。エジプトから引き返した後の共依存っぷりを示すシーンだけでは、尋常ではない共依存を感じるまでには至らず。

4時間ある完全版があるみたいなので、それをぜひ観てみたい。でも、映画体験としては大満足だし、十分に面白いので映画館で観るのにはおすすめ。

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