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何も知らない夜のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

何も知らない夜(2021年製作の映画)
3.0
【手紙から紐解くインド社会】
山形国際ドキュメンタリー映画祭にカンヌで話題となった作品『何も知らない夜』が来ていた。本作は一時期MUBIでも配信されていた作品である。手紙を通じてインド社会を語る作品なのだがこれが独特な映画であった。

本作は架空の手紙の文通によってインド映画テレビ学院で2015年に起きた学生デモの空気感を伝えていく。画は当時のフッテージを白黒ベースで繋ぎ合わせており、何もない空間が段々と雪崩れ込む警察との凄惨な闘いに発展していく映像がおもむろに挿入されてギョッとする。この手のアプローチは今年のベルリン国際映画祭で上映された『BETWEEN REVOLUTIONS』に通じるものがあるが、それと比べると実験映画要素も多い。例えば、夜の森のような空間から段々と壁画のようなものが浮かび上がってくる。映画のアクセントとしてオレンジトーンのザラ付いたフッテージが挿入されるといったメリハリのある演出が際立っていた。デモや紛争を扱ったドキュメンタリーはその騒乱の渦中に入ることが難しい可能性が高く、ドキュメンタリー映画界隈ではアニメを使うなどといった工夫が凝らされる。架空の手紙を使った語り口は新鮮に感じた。

★山形国際ドキュメンタリー映画祭2023徹底解剖【che bunbun/透明ランナー】※再放送▼
https://m.youtube.com/watch?v=zMTJ6wnR8AU&t=1441s
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