CHEBUNBUN

あの島のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

あの島(2023年製作の映画)
1.5
【本番とリハーサルを並べただけじゃあ......】
山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション部門に出品されていたダミアン・マニヴェル新作『あの島』を観た。前作の『イサドラの子どもたち』が大傑作だったので期待していたのだが悪い意味で裏切られてしまった。

モントリオールへ旅立つローザとの別れの感傷的なパーティを劇映画パートとリハーサルパートに分けて描く。『イサドラの子どもたち』に引き続きダミアン・マニヴェルは本番と裏側の対比によって人間を捉えようとしている。しかし、今回は単純に2つの側面を並べただけに見えて、感傷的な空間で押し切ってしまっているところが残念であった。『イサドラの子どもたち』の場合、イサドラ・ダンカンのダンスが譜面を通じて人へと継承されていく過程を段階的に描いていたから面白かった。譜面を通じた継承、人を介した継承。それによるパフォーマンスを舞台で観た観客が反芻することで継承されていく。異なる視点があったからこそ、本番/リハーサルの層に深みがあった。それが今回希薄だったのである。本祭でかなり期待していただけにがっかりしてしまった。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN