あびえす

火の鳥 エデンの花のあびえすのネタバレレビュー・内容・結末

火の鳥 エデンの花(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

原作よりもマイルドに、現代風に描かれているのかと思ったが、一部を除き、インパクトも苦しみも壮大さも原作通りだった。

原作は悲しくも美しいバッドエンドだったけど、映画は悲しくも美しくそれでいて前向きなバッドエンドという感じ。


ロミとジョージは地球から逃げて新天地を求めてきたところは同じだが、今後に希望的観測を持ってる所は原作と異なるので、たとえジョージが生きていたとしてもそのうちエデンで自分達の血は絶えるとは思わなかったのか。

近親相姦の問題点はロミの息子の時点でムーピーを出してきたことで改善はされているが、子孫で交配してきたことには代わりないのが結局滅びゆく種族でしかなかったこともメタファーか。(ムーピーは別の種族になることもできるので、別の遺伝子を持つ物の姿になって交配することも可能?)

コムの念力が使える設定がいつからなのか唐突さが強い。


手塚作品ならではのスターシステムのキャラとクロスオーバーしてる設定などは良かった。知らなくても整合性は壊されていないし、ファンサービスでもあるし。(ヒョウタンツギもちらほら)


ロミの姿になっていたムーピーの女性がしっかり訝しんでいた描写があり、ズダーバンの狙いに注目していたにも関わらずその後何も描写も無くいつの間にか破滅していたのが残念というか虚しいというか。

原作の時からズダーバンがエデンを破滅させる手段と呆気ない最後が胸糞悪くて虫唾が走って仕方なかったので、それがその熱量のまま映画でも描かれていたのが見事というかもう少し違うものが見たかったなというか。

ラストの滅びたエデンのシーン。クローバーの花畑との対比になっていて、美しいがあの花一つ一つがエデンの住人の死体なんだよな、と考えてしまうとタイトルのエデンの花の恐ろしさとインパクトに慄く。
センスはあるが人の心とかあるんか。頭火の鳥かよ。

故郷から逃げてきた人が、故郷を恋しく思ってしまったばっかりに、やっぱり好きだと改めて自覚した暮らしている星の住人全員を滅ぼしてしまうとか、望郷ってそんなに罪深いことなんですか…?


あとジョージ役の方、アニメのアテレコの演技はちょっと残念だったけど声優のお仕事更にしたいみたいだったので頑張ってほしいなと思いました。