アニマル泉

サンタクロースの眼は青い 4Kデジタルリマスター版のアニマル泉のレビュー・感想・評価

5.0
ジャン・ユスターシュの第2作。ゴダールの「男性・女性」の未使用フィルムで撮られた。ユスターシュが10代を過ごしたナルボンヌが舞台だ。後に「ぼくの小さな恋人たち」ではナルボンヌ時代の長編が撮られることになる。本作と「ママと娼婦」と「ぼくの小さな恋人たち」は自伝的三部作と言われる。
本作も「歩く映画」だ。ダニエル(ジャン=ピエール・レオ)はよく歩く。市場で財布の落とし物をドゥーマス(ジェラール・ジメルマン)と探しながら歩く。「ナンパ」も歩きながらだ。ダニエルがマルティネス(アンリ・マルティネス)をナンパするくだりは歩きながら、ベンチに座るとマルティネスがうろうろしながら、かなり長回しのワンカットが面白い。「並ぶ」主題は、カフェで横並びに座る不良仲間、あるいはラスト、道に横並びで歌い、シュプレヒコールを上げて売春宿に突撃するバックショットが顕著だ。「反復」の主題は、不良たちが集まる同じ溜まり場、あるいはマルティーヌ(カルメン・リポリ)が元ボクサー(ジャン・ユスターシュ)をはじめ次々と別の男と繰り返す抱擁、さらに不良たちがバイクでベンチに集まり女連れの仲間を冷やかす場面は冒頭と終盤で反復される。ダニエルがサンタクロースの扮装をして街頭で通行人と写真を撮るアルバイトは、記念写真で「並ぶ」主題と、同じ場所で次々と通行人に声をかける「反復」の主題が重なるユスターシュらしい場面になっている。ダニエルは撮影時に女性の後ろから触ることをおぼえる。背後から女性にキスしたり抱きつくのは「ぼくの小さな恋人たち」で繰り返される特徴だ。ダニエルはサンタクロースのバイトでジャニーヌ(ノエル・バレスト)とデートの約束をするが、待ち合わせていきなり建物の角に押し付けてジャニーヌは逃げ出す。ここでカメラからジャニーヌがフレームアウトしてダニエルだけのワンショットになるが、切返さずにダニエル押しでジャニーヌがオフショットになるのが独特だ。
本作はガラス越しなどのフレームショットが多い。手前でダニエルがピンボールをしているとガラス越しに奥の店内に写真家(ルネ・ジルソン)がサンタクロースのバイトを募っていて、呼ばれたダニエルが手前から奥の店に行って写真家の説明を聞くワンカットは素晴らしい。
「盗む」テーマは書店の万引きが描かれる。
本作は劇伴奏はない。
撮影助手でネストール・アルメンドロスがクレジットされている。
白黒スタンダード。47分。
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