稲葉光春

ぼくの小さな恋人たち 4Kデジタルリマスター版の稲葉光春のレビュー・感想・評価

4.7
見入ってしまった映画。ゆったりと時間が流れていて、心地よい。特にドラマチックなことが起こるわけではないが、淡々と映し出される光学的状況は、全て美しく、惹きつけられる。うっとりしてしまう感覚。

田舎のペサックで、のどかに祖母と2人暮らししていた主人公ダニエルは、サーカスに行ったり、村の幼馴染たちと遊んだりしていた。
そこから母親に連れられ、ナルボンヌで生活をするようになるが、そこで進学を諦めて働くよう促され、自転車修理の仕事を始める。引越ししてからの暮らしは、明らかに前よりも余裕がなく、大人になれない自分への嫌気も感じている。

本作品では、性的モチーフが描かれていて、教会での聖体拝領のシーンから始まり、街で見かけるカップル、映画館でのキス、ラストの幼馴染の胸に触れるシーンと繋がるが、ペサックを離れて、社会に揉まれて帰ってきた主人公の性的感覚は、以前とはいい意味でも悪い意味でも変質していた。

印象的なシーンは、最初の教会のシーン。とても美しい女の子と、とても主観的な映像。サーカスのシーン。川の向こうを眺めるシーン。ナンパしてから草むらで寝転びながら喋るシーンからの「目を閉じたら2人になれた」のシーン
稲葉光春

稲葉光春