寝木裕和

トルテュ島の遭難者たち 4Kレストアの寝木裕和のレビュー・感想・評価

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@渋谷ユーロスペース
『みんなのジャック・ロジエ』にて。

なんだろう、… この、一向に着地しない感じの冒険劇。

それなのに、「バナナ万引き事件」の疑いが晴れたことによって、主人公ジャン・アルチュール・ボナバンチュールの、傍若無人な冒険ツアーが終わったときのなんとも言い難い寂しさは、これまたなんなのだろう…。

ある程度のところはシナリオもあったのであろう、しかしこの作品で見られる場面の多くを偶然にまかせた結果、これほど先の読めない綱渡りのような冒険映画が完成したのか。
まるで素人が撮ったようだとも言えそうな展開なのに、この作品の中の登場人物たちは(特にジャン)意味不明で滑稽で、それなのに活き活きとしていて、観ている方もいつのまにかその動向から目が離せなくなってしまう。

そして個人的にはこの作品にブラジルの偉大なパーカッショニスト、ナナ・ヴァスコンセロスが出演しているのも特筆したい。

それもかなりユーモラスな船の船頭役で。

作中 鳴り響く彼の奏でるビリンバウの音色が、いやが上にもこの物語をレイドバックした作風に仕立てるのを助けている。
寝木裕和

寝木裕和