矢吹

トルテュ島の遭難者たち 4Kレストアの矢吹のレビュー・感想・評価

4.2
ひょんな恋敵の用意から、
とある偶然が重なって、
そもそも斬新なアイデアではあるということにしても、その斬新なアイデアというものも、この世の緻密な変化の微妙な重なりが影響してふと生まれるものであるともして、
あそこまで、おかしいなことになってしまうとは。
確かに、偶然は重なったけど、
お前が悪すぎると思うぞ。
ジャン=アルトゥチュール・ボナヴァンチュール。
まじで辿り着かない。という、
この時間こそが、地獄の旅。
「ロビンソンクルーソー 生き延びろ」

ただの恋人役は、いつしか恋人のように。
ただのツアーの担当者は、いつしかサバイバルの権化のように。
都度現れる、飲み込まれた人間。
役柄に脳みそを持っていかれる。
のめり込んでしまう人間の、見て笑うことでしか、どうしようもない暴走。

ボナヴァンチュールが、途中で見つけて、握ってしまった棒?刀?もダメなんだよ。
ただでさえ、散歩を、平気で冒険に変えたりしますからね、ああいうのって。

見事にトラブルだらけの、ボナヴァンチュールの気分で地獄。に続き、
アシスタントちゃんの語りから突如始まる視点の変化も、おかげさまで、
これがまた、あまりにも不穏なのよ。
この先いいことなんて、どう考えても無い、ということもわかりきってるからなんけど。
こうして、アシスタントちゃんの気分でも地獄。
このあたりから、音楽家の楽器の音がなくなり、荒波をかき分ける船のカメラワーク、一応どこかに希望を持って進んでる感じはあった、波の揺れさえなくなって、
孤島の暗闇。
そして視点が変わったからこそ、明確に全員が距離を置いたまま傍観者となれる、言わんこっちゃなさすぎるシーンの哀愁。
仮にね、このシーンのために、他の全てのシーンを積み重ねていても、十分すぎるほどにお釣りが来ると思った。
あのシーン、そんくらい大好きよ。

あとはシンプルに、前人未到の密林を行く時の、マジでこけてるみたいなアクシデントもヒヤヒヤもので、怖いし、たどり着いた島のゴツゴツした砂利とかも、見てるだけで、心の底から不愉快で、すごく良かった。

ブラジルのお店のノリがめっちゃいい。
そこで奏でられる劇中の曲もめっちゃいいんだけど、そっちはおそらく解決したので、あとエンディングの曲だけ誰か、わかりませんかね。教えてください。
教えてくれたら、あの果物を差し上げます、皮剥いて食べる、アレ。あげますから。よろしくお頼み申します。
矢吹

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