開明獣

フィフィ・マルタンガル デジタル・レストアの開明獣のレビュー・感想・評価

5.0
みんな大好っきジャック・ロジェ❤️

いわゆる、スラプスティック(ドタバタ喜劇)で、入れ子構造の劇中劇の展開が、どこまでが台本でどこまでがアドリブか分からなくなってくる不思議な展開😮

劇中劇の内部と外部の境界がなくなり、外部は内部ではない、が、いつまにか外部が内部にとりこまれてるような戦略は、この時代のフランスの知識人なら必ず読んでいたであろう、ポストモダンの哲学者の巨人、ジャック・デリダっぽいのです🤔

何か絶対的な存在があることを前提にした形而上学から、サルトルらが中心であった、人間の存在そのものこそが世界の中心であると解く実存主義へ。そこからソシュールの言語学の考え方を取り入れた、レヴィ・ストロース、ロラン・バルトやルイ・アルセチュールらが中心人物だった構造主義へ。構造主義は、私たちの生活は社会システムの構造にとりこまれて初めて意味をなしている、または、あるものとの相対的な関係値で成り立っているというものです。

犬は、猫という存在があることに影響を受けざるをえない。あるいは、ある人の思想は、生まれた場所の文化的、あるいは経済的な環境に左右されざるを得ない、という実存主義とは対局的な立ち位置ながら、世の中に絶対なんてものはないよ、という主張でもあり、大きく世の中の根底を変える思想となったものです。

その後出てき前述のジャック・デリダらは、脱構築ということを言い始めました。ものすごく雑に言うと、全てのしがらみから脱していくことが大事だ、的な考え方なのですが、なんでもかんでも小難しく考えるために、言葉の遊びのようになってしまい、一世を風靡したあと、萎んで行きました。今は、ドイツのマルクス・ガブリエルらが提唱している、新実存主義が思潮会のメインストリートのようですが、同氏のベストセラー、「なぜ世界は存在しないのか」(講談社メチエ選書)は、一度は紐解いてみても損はない本だと思います。読みやすいし、分かりやすい、現代の哲学書の名著と言えましょう。

と、いつもの如く脱線三昧ですが、前述のジャック・デリダのように、軽やかに既存の書法をスルーして鮮やかに観るものを幻惑しながら魅力するスタイルは、この人一代限りな気がしました。

ゴダールのように難解ではなく、一見軽妙洒脱なのに、実は深度のある粒度高い作品で、よーく噛まないと咀嚼出来ない気がしてます😳

憎いぜ、ジャック!!弟子にしちゃる‼️故人だけど・・・🥺
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