半兵衛

博徒対テキ屋の半兵衛のレビュー・感想・評価

博徒対テキ屋(1964年製作の映画)
3.0
タイトルからしてテキ屋と博奕打ちの争いを描いているのかなと長年気になっていた作品だが、いざ見てみると別に二つのグループが対立するわけではなくテキ屋の息子である鶴田浩二が複雑な事情によりヤクザとなったという話なのでがっかり。とはいえ映画自体は東映任侠映画を小沢監督が手堅く娯楽的に作り上げ、老若男女分け隔てなく気軽に見れるジャンクな面白さが溢れる作品になっている。オーソドックスすぎて意外な展開が全くないので飽きやすいという弱点はあるけど。

昭和初期の浅草の風景を再現したセットや、テキ屋がどういう暮らしをしているのかを詳細に再現しているのも見所のひとつ。京都の撮影所なので関西人のコメディアンが出まくるので、東京の雰囲気が全く無いのはご愛敬ということで。

まだ任侠映画が作られたばかりの時期なので、近衛十四郎や片岡千恵蔵といった時代劇出身俳優が顔を出すのが新鮮。そんな彼らのトラブルを、新世代の鶴田浩二が解決するという話の流れは当時の東映の状況を見ているようで皮肉。後年任侠映画で活躍する松方弘樹や藤純子が脇役にいることもその状況を更に際立たせる。

ラストの近衛と鶴田の対決シーンは他のヤクザ映画では見られない場所、でも時代劇では結構見かけるところで展開されて斬新。

あと鶴田を愛するヒロイン役で島倉千代子が出ているけれど、あんまり印象に残らないのが残念。
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