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背くらべのseapony3000のレビュー・感想・評価

背くらべ(1962年製作の映画)
5.0
大槻義一監督作品、木下恵介原作の「流し雛」と同じくまた乙羽信子。コレは山田太一脚本。愛弟子二人を組み合わせる恵介ワールド。夫を事故で亡くして二人の息子を育てる富士吉田のおっかさん乙羽信子。大学行けずに地元で働く兄の川津さんは弟をどうしても大学に行かせたい。婿養子は嫌だと東京行ってよ私も追いかけるからとせがむ恋人は島かおり。尊敬する工場の先輩も東京から来た社員に役職取られて田舎って会社ってほんと最悪、東京出なきゃはじまんない。いろいろあって叔父を頼ってめでたく上京…ここまででしっかりみせるのにまだ30分強。でもそうはいってもあっさりはしていたなーと感じていたら、後半からグイグイ心に突き刺さる山田太一脚本(まだ若干20代の太一センセイ)。叔父・多々良純の工場では絶賛ストライキ中。わけもわからず労働者たちを追い払う役目を押し付けられる川津さん。こないだまで労働者だった川津さんの理不尽な立場。辞めて実家に出戻る居場所のなさ。地元の工場仲間だった常田富士男のパイプのエピソードが前半から後半へと沁みる。こんな些細なエピソードたまらない。背くらべの柱より、常田富士男のパイプがヤバい。誰も吸わないんだから煙草。そんで例の東京の工場の若者がわざわざ川津さんを訪ねてくるくだり、これこそが山田太一らしさ…しかも「野菊のような君なりき」の田中晋二。どんだけ恵介。
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