無影

ナチ刑法175条/刑法175条の無影のレビュー・感想・評価

ナチ刑法175条/刑法175条(1999年製作の映画)
5.0
より多くの人に観てほしいという希望を込めて★5。
これまで観てきた中で、同性愛者の存在を一番身近に感じたドキュメンタリーでした。13人に1人は同性愛者であると言われていますが、私自身は接したことがありません。しかし、作中で語られていた通り、町1つが同性愛者たちのの楽園となるほど存在するのだとすれば、きっと自分が気付いていないだけで周りにもいるのだろうし、もしかしたらこれまで接してきた人々の中にも同性愛者がいたのかもしれないと顧みました。そして、そんな無意識が許されるぐらい、同性愛者の存在が不可視化されている上、異性愛者中心に社会が築かれているのだと気付きました。
そして、本格的にゲイを弾圧したのはナチスでしたが、その根拠となる刑法175条自体は19世紀から既に存在し、ドイツ敗戦後も21世紀になる寸前まで維持されていたというのにも驚きました。また、ナチスの台頭時に野党はナチ党幹部が同性愛であることをアウティングして批判の材料にしたというのも興味深かったです。現代的な感覚では、ナチスが同性愛者を弾圧しているなら、野党が同性愛者に寄り添う姿勢を打ち出しそうと考えていましたが、当時はそうならないぐらいにはホモフォビアが社会的に蔓延していたのですね。
また、ナチスによる強制収容を生き残った当事者が、当時のトラウマから証言を拒否したのも、とても印象的でした。その姿勢が、どの証言よりも戦争や全体主義の恐怖を伝えてくれました。
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