akinaki

ジョー・ブラックをよろしくのakinakiのレビュー・感想・評価

5.0
ファンタジー現代劇の「個人的」な最高峰。長編、緩慢なストーリー展開、ここと言って高揚感があるわけでもないクライマックスとどう考えても上位にいきそうがない凡庸感だかそれでも「個人的」に唯一無二と言えるのは演出。アンソニー◦ホプキンズ、ブラット◦ビット、クリア◦フォーラニらのパフォーマンスがどれも秀逸なのだ。過剰な演出は感じられないのに、心のときめき、親心、すれ違い、不安、野心、嫉妬、貪欲、欺瞞など様々な感情や思いの起伏が「セリフ」を追うことなく手に取るように分かる。目線、さりげない仕草や口調、声量等によって表現される感情の積み重ねの内にドラマが生まれ、その微妙な変化をロング、ミドル、クローズアップと多様な技能を駆使してカメラワークが追い、水の反射光、自然光、屋内照明各種、夜光、パーティ会場の電飾、瞳光の有無といったライティングが演技を支える。さらにこれらを全て包み込むように奏でられるトーマス◦ニューマンのスコア。じっくりと腰を据えて3時間集中すればする程に「いのち限りある人間への讃歌」という本作のテーマが心に染みる。サプリのように定期的に見たくなる一作。
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