付き添いで観る母

身代わり忠臣蔵の付き添いで観る母のレビュー・感想・評価

身代わり忠臣蔵(2024年製作の映画)
1.0
【6歳男子と観ました】
邦画の一番嫌なところを全部詰め込んだみたいな最悪の映画でした。シニア世代が昭和を懐かしむための映画なので、R18指定でいいと思う。6歳男子にこんなもん観せたくなかった。とにかくひどかった。今後しばらく邦画は見なくていいやとスッキリした心持ちで思えてよかった。

■何の取り柄もない主人公が異世界転生して俺TUEEEE系映画
みんな「なろう系」などをバカにする傾向があるが、身代わり忠臣蔵で描かれているストーリーはまさに「異世界転生して俺TUEEE」であった。

この映画で想定される視聴者層は「何者でもない中高年。自分は生まれが悪く、世の中が悪いと思っている。上司に不満があり、もしも上司のポジションになれれば、凄まじいマネジメントスキルを発揮できるはずだと感じている」という感じなのだろうか。観てて恥ずかしかった、痛々しかった。

「マネジメントはしたことないけど、自分が上司のポジションになったら、めちゃくちゃいいマネジメントができるはず!」みたいなことを言う人は散見されるが、専門性のあるスキルに対しての軽視がすごいなと思う。

身代わり忠臣蔵のストーリーは「もし教室にゾンビが来たら〜」的な、中学生のしょ〜もない妄想の域を出ない。知らん人の知らん妄想を2時間語られて「しんど」とならずに「楽しい!!」と思える人々の無邪気さのことを思う。

■女性は全員、俺たちの性欲の捌け口!
で、こういう「中学生」的妄想で作られた映画はしばしば「女を踏み台にしてホモソーシャルな絆を深めあう」行為を未だにやる。令和なのに……。

おっぱい揉ませて仲直り♪  男の子って結局こういうの好きでしょ〜? みたいなの、ゲンナリである。男だろうが女だろうが、他者の肉体を自分に供与させなければ、己の感情すらコントロールできないような未熟な人間は、社会に出てこないでほしい。「ここに女のおっぱいがなければ、目の前の男と喧嘩がやめられなかったであろう」と思っているような人間、端的に、反社会的すぎる。何らかの治療が必要である。

翔んで埼玉でもゲッソリしたけど、なんで女の人をバカにしないと笑いを取れないのだろうか。女がバカにされることが邦画における「必要悪」だというのなら、邦画など潰えればよい。

■性被害のトラウマに遭うヒロインも、俺の性欲の捌け口!
恐怖すぎたのが、領主の慰み者として長年性被害に遭ってきたヒロインが、主人公に対して「あなたは性的な行為をしてこないから素敵だ」というような吐露をするシーン。

その直後に主人公は、本当に意味がわからないのだが、女性にキスを迫り、拒絶される。

いくらなんでも最悪ではないのか。性被害にトラウマを抱えている人に対して、領主という立場を活かしてキスを迫るだろうか普通。密室で、二人きりの寝室で。

ヒロインは「明るく」主人公を拒絶し、主人公はいじける。それがコメディシーンとして処理されており、客席からも笑いが起きていて、怖かった。明るく拒絶なんてしなくていい。でも明るく拒絶しなければ「ノリが悪い」と言われる。領主と使用人という立場なので、殺されるかもしれない。あの拒絶だって命懸けだったかもしれない。

ちなみに、主人公が自分の死を覚悟したタイミングでヒロインにかける言葉は「そなたは器量がいい」。ツラの良さしか褒めるところがないのか。人間を見る目がゼロだ。

■家族だからどうのこうのが、薄っぺらすぎる
主人公は最後、家臣達が家族同様に大事だから、自分一人だけが死ぬ道を選ぶ。ところが、主人公がモタモタしているので、家臣達は何分も何分も命懸けの戦闘を強いられる。主人公のせいで酩酊状態にさせられた上、死にかけた部下もいる。

女達は丸腰で、武装した敵達に対峙させられた。武装できる人間達は閉じ込められており、彼女らを守ることはできなかった。

私にも「家族」がいるが、私なら、自分が速やかに死ねば家族全員の命が助かるというとき、ベラベラ喋ったりしない。前線に立ち、さっさと死ぬ。こいつは死ぬ気がない。プロットを考えれば死ぬわけにいかないのは理解しているのだが、「ならさっさと死ななくていい道を提示してくれよ」と思ってしまった。最後のラグビーシーン(死者への冒涜シーン)は文字通り「消化試合」の気持ち。さっさとオチをつけてくれたらいいのに、何を楽しめばいいのか分からない。テンポが悪すぎる。

■とにかく叫ぶしうるさい
邦画はすぐ叫ぶので嫌いなのだが、この映画もすぐに叫んでいた。なぜ叫ぶのか、意味が分からない。

■「お前どっかおかしいんじゃねえの?」←最悪
・「おかしい」という言葉遣いがそもそも配慮に欠ける
・「メジャー」でない性的嗜好をもつ人に対して「おかしい」という言葉をかけるの、大きなお世話である

***

総じて、2024年に公開された映画とは思えなかった。2000年ぐらいの映画だと言われたら「ああ、平成初期ってまだまだ酷かったよね〜」と笑えるんだけど。