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身代わり忠臣蔵のCINEMASAのネタバレレビュー・内容・結末

身代わり忠臣蔵(2024年製作の映画)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

 うーん…… 今様のコメディとしての<新解釈・忠臣蔵>を指向しているが、どうにも空回り…… 

 昨年末に観た『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』の片岡千恵蔵版大石内蔵助の後だと、永山瑛太ではどうしようもなく軽すぎる。『大忠臣蔵』の市川猿之助、『忠臣蔵』の長谷川一夫、『赤穂城断絶』の萬屋錦之介、『忠臣蔵外伝 四谷怪談』の津川雅彦、『決算!忠臣蔵』の堤真一と比べても貫禄の無さは歴然だ。そこをひっくり返そう=逆を狙おうという算段が本作に有る事は明瞭だが、幾ら何でも貫禄が無さ過ぎる。筆頭家老としての威厳と素顔との落差が無く、鼻白んでしまった。

 ムロツヨシの二役による一枚看板も、頑張っているけれど興行に結び付いているかというと、どうも彼一人では荷が重いよな、と…… 実際に興行的に苦戦している模様である。まあ、忠臣蔵映画を2月に封切る時点でどうかと思うし、ハナから「これはコケるぞ……」と予想していたので全く驚きはしなかったが、それでも休日で客入りが10名ちょっととなると寂しい。そして寂しい映画館は哀しい……

 作品としては、中盤・終盤に、「おっ!」と感心した点が幾つか有ったけれども、それが線にならないのがもどかしかった。吉良方の剣客=清水一力を演じた寛一郎(←彼は昨年公開の北野武監督による秀作『首』では森蘭丸を演じて、織田信長=加瀬亮に盛大にオカマを掘られていたなあ……)は良かったけれど、もっと凄腕振りを見せても欲しかった。柄本明の腹芸演技や北村一輝の顔見世程度の出演も、左程の効果を上げておらず。河合勇人の演出にあまりキレが無く、これは人選ミスであるとも感じた。

 あと、クライマックスの見せ場として伏線無しでいきなり<生首ラグビー>されても困る。ドタバタと今風の混交の果てに新機軸の時代劇を展開しようとする意図は理解出来るのだが、何の説明もなく生首をポンポン投げ繋いだ挙句、合間にホイッスルを鳴らしたり、スクラムを組まれても「いきなり、なんやねん、これ……?」としか思えないではないか。

 先に書いたように、幾らか感心する部分は有ったものの、全体的に残念な出来であった。
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