Sakura

市子のSakuraのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭、彼氏と好きな食べ物の話をしている時に、彼女の境遇を悟った。
裕福な暮らしを送っていなかったんだろうなと。
けれど、最後に市子と彼の今までの暮らしが映し出された時、
彼女が好きな食べ物を作って彼を待つシーンがあった。
市子にとって、彼との暮らしにはきっと安心感や幸福感があった。
彼女にも幸福な時間があったことを知ってホッとした。

市子の境遇は悲劇でありながらも、
生き抜く力があった。
最初はその力に「ずるさ」を感じたけど、
その「ずるさ」はその境遇から市子が学んだものであり、
「ずるい」のではなく「賢い」んだと思った。
この前会社の研修で学んだことだが、
人は主に思春期までの原体験をもとに、
人と接する時に取った方が良い行動を学習し、それが後の自分の行動要因になるそう。
市子の悪魔的な行動は、そうした方が「上手くいく」と学習した過去があるから。

杉咲花が美しかった。
白くて艶やかな肌。細い首。
お母さんとは違って、彼女に踏み込む怖さがあった。
だから、市子の周りの男たちはお母さんの周りの男たちとは違った。

3年もいて市子のことを何も知らない彼を見て、私と私の彼氏との関係性と全然違うと思ったし、素直に打ち明けられる関係性が大事だよなと思ったけど、
後半のあんなに笑い合っている2人を見たら、もう「こうあるべき」「理想の彼氏の特徴」とかそういうものが無意味でしかないなと思った。
結局、生い立ちやらでその人にとっての幸せは異なるわけで、他者に決められるものではない。
自分にも自信を持ちたいし、同時に人の恋愛やら相談事に対して、
自分の考えをあくまで第三者的な視点で話すことが相談者へのためだなと思った。
今SNSに溢れてる言葉に左右される必要なんてない。

時間が経てば経つほど、
この作品の良さを感じてくる。
まさに手元に置いておきたい作品。
こんな作品に出会ったのは、『カモンカモン』以来。
良い作品に出会った。
Sakura

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