エニグマ

市子のエニグマのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.9
プロポーズされた翌日に失踪した市子。彼女を探す婚約者は、彼女がこれまで出会った人々を通して彼女の半生を知っていく。
市子はただ幸せに平穏に生きたかったのだろう。3年付き合った彼女を追い求める若葉竜也や高校の同級生の森永悠希、高校時代の彼氏の倉悠貴、市子の母親の彼氏で市子に性加害を繰り返す渡辺大知などこの作品には様々な男が出てくる。誠実さの滲み出る若葉竜也を除いて皆、絶妙な気持ち悪さを持ち合わせている。特に森永悠希は「俺にしか市子を救えない」といった独占的思考が何とも気持ち悪かった。そしてその彼の行き過ぎた好意もまた市子にとっては邪魔だったのだろうというのが結末から感じられる。事実だけ見れば彼女は何人も殺した殺人犯であるが、別に悪意は無く、ただ普通に暮らしたかっただけだったと思うと悲しさが込み上げてくる。しかしそんな彼女に狂わされた人々もいる訳で何が正解とも言えない難しさであった。劇中でも言われていたが、彼女のその思わせぶりで冷酷な感じは「悪魔」にも思える。

演技的なことを言えば、杉咲花がこんな影のある演技をする人だとは思わなかった。高校生役や朝ドラなど清純派なイメージが強かったが、いつもと違うタイプの彼女の演技は圧巻だった。
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