ゆきゆき

市子のゆきゆきのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

長谷川からのプロポーズの直後に姿を消した恋人の市子。彼女の行方を探すがやがて市子の隠された過去が浮かび上がってくる。

人探しもの作品は傑作が多いが、存在を消すに至った人物の壮絶な半生が描かれるので毎度心にずっしりくる。今作の市子は300日問題により無戸籍となった少女。通常ならこのようなキャラクターは他人の人生を奪って生きていくのが定番。彼女も最初は妹である「月子」の戸籍を使って成長していくが、やがてそれを拒否して本来の「市子」として生きていこうとする。しかしそれは他人に成りすますより困難な道であるという矛盾。

市子が市子として生きていく過程で、彼女を食い物にしようとした男たちは次々と破滅していく。その中で恋人として向き合い続けた長谷川は、彼女の真実を知った上でも最後まで助けようとする。市子も長谷川との生活を本当に幸せに思っていたものの、ラストに過去を清算した市子にとって果たして長谷川は今でも必要な存在なのだろうか。

満足気な市子の表情に反して、その後の登場人物たちの行く末を思うと暗澹たる気持ちとなる後味の映画でした。
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