まる

市子のまるのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.0
杉咲花がとにかくすごい。すごいというのも、演技。と表情。声かわいいはいつもですが今回は一層悪魔的。人をダメにする。引きつける。魅力的だ。青くて痛くて脆いを思い出した。ひぇ。

怪物、福田村事件とか、いわゆる羅生門形式?の映画。とみせかけて常に市子がそこに''いる''し、なんとも一人称な感じが薄い。三人称。上記2タイトルあたりとは切り替え時に名前と時間軸が変わるから同形式だと感じたのかな。

その人をその人たらしめるものは、虚しくも感情ではなく戸籍だけ。目の前にいるあなたはあなたなのに、当人間以外では誰かわからない。「あなたは誰ですか」の類のセリフが複数の人物から複数の相手へと投げられており、印象に残る。

月子の遺体が発見される前から荷物詰めてなかった?っておもったけど、婚姻届を貰った時点でもうそこにはいられないから消える準備は出来てたんだな。

全てを開示するだけが「好き」とか「愛」じゃないよねっていう。全て隠しても嘘ついても一緒にいたいそれも好きで愛じゃないかと思える。

結局エゴの押しつけあいなんだけど俺が守る!とか、会って抱きしめたい!とか行くとこまで行けば人は動くし伝わってくる。

相手のこと知ったらなんか優位な気分になって自分しかいないんだとかって思ってしまう。わかる。そう考えると長谷川は何にも知らないのに幸せを与え続け忘れたフリもするし触れてほしくないところに触れないので、北が自分本位の優しさなら長谷川のが本物の優しさなんだろうな。

けっきょく何度も思うけど人のことなんて理解できない。いま見せてくれてる面以上は向こうの意思だからここで甘んじとけばいいと思うね。出したくて出せないのと、出す必要なしと判断して出さないのは全然違う。

とりあえず好きな感じの映画でした。

2024一本目
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