川辺市子は常に見上げていた。
カメラは上から撮っていて、彼女は見下ろされていた
まるで、彼女が社会の底から上を見上げ続けているような
月子の息を止めた時。唯一、市子が見下ろしていた
答えはなく終わる
善悪を決めず答えは差し出さない
目の前の人のことをどれほど知っているのか
情報さえ嘘をつけるとき、何を頼りに誰と関係を築き続けるか
無戸籍
戸籍
名を名乗ること、保険証を出すこと、雇われること、それ伴い書類を出すこと、書類を出すことに躊躇わないこと、名を名乗ることを躊躇わずにできること
戸籍は私を証明するものであった。疑わずに使っていた制度だった。
だから、制度から逸脱している人のこと、他人を名乗れる穴があること
知らなかったし、知ることを迫られる人生でなかった
出生後の離婚によっては、戸籍を得られないなんて有り得ない
戸籍、住民票がなければ行政サービスも学業も受けられない
セーフティーネットから溢れる
ショートケーキを出す側
出す側に守られて、その世界のみを知って育った。
手ブレもあるカメラワーク
ドキュメンタリーみたい
バイクの速さと共に加速するカメラ