Jun潤

市子のJun潤のレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.8
2024.1.27

杉咲花主演×若葉竜也×森永悠希×渡辺大知×宇野祥平×倉悠貴×戸田彬弘監督・脚本。
ずっと気になっていた作品を今回ようやく鑑賞です。
今年は本場のオスカーの方が盛り上がりそうですが、個人的にはこれで日本アカデミー賞主要部門の優秀賞受賞作品をコンプできたので、予想が盛り上がりそうです。

長谷川義則と共に暮らす川辺市子は、彼からプロポーズされる。
嬉しさのあまり涙を流す市子だったが、次の日彼女は家を出て姿を消す。
数日後、長谷川の元を訪れた刑事の後藤は、川辺市子という人間は存在しないと告げる。
川辺市子と、同じ顔の謎の女性・川辺月子の正体を巡る、サスペンス・ラブストーリー。

最高や!ミニシアターオールスターズ!
前評判の高さと、杉咲花が優秀主演女優賞を今作で受賞ということで変に期待しすぎてしまったところはありますが、個人的には今作では男優たちがピッカピカに輝いていましたね。
これまでは感情を表に出さない役柄ばかりを見ていた気がするので、感情を爆発させた若葉竜也の演技にこちらもカタルシスを受けました。

序盤の説明が少なすぎるにも関わらず、続々と明らかにされる市子(月子)の正体と時系列には違和感しか生まれず、彼女のことがますますわからなくなってきていたタイミングで、画的にも話的にも大袈裟にせずに語られる衝撃の真実。
それまでのズレが全て解消され、その後の市子の行動原理にも繋がっていくはずが、もはや市子のことがわかる人間は、画面の向こうにもこちら側にも、どこにもいない。

市子に無いんは愛、有るんは嘘。
離婚後100日問題、ネグレクト、ヤングケアラーなど、簡単に解決できない社会の問題を一身に引き受け、生命も戸籍もない月子と対比して描かれる、愛を受けずに生き続ける市子の姿。
彼女に幸せは許されないのか、彼女自身が自分の幸せを許していないのか。
人間が生きるのに必要なのは、命だけじゃないのかもしれない。
他に必要なのは戸籍か、愛か。
Jun潤

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