ブラウンソースハンバーグ師匠

市子のブラウンソースハンバーグ師匠のレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
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劇場の壁に貼られた市子に約1分間メンチを切ってみましたが、めちゃくちゃ強かったです。

という冗談も、本編を観て、あながち間違いではなかったんだと心の中で笑ってしまいました。
あと、時間差タイトルバックが、すごい謙虚な文字サイズだったので、それにも笑ってしまいました。

市子は「加害/被害」の構図の中で「被害者」側の立場に追いやられそうになると、決まって反発的な態度を取ります。むしろ「加害者」側に回ろうとする節すら伺えます。
これは市子の抱える事情を、単純な「被害者」の話として捉えようとする視聴者への反発でもあると感じました。
極めつけは、被介護者側の視点から市子の恐ろしい表情を見せ、「加害性」を強調している点です。あれは流石に「頼むよ市子、てか杉咲花。もうちょっと苦しそうにして」となりました。

そんなこともあり、市子の人物像は断定的に語りにくく、視聴者も登場人物も撹乱していくその自由奔放っぷりは、拡大解釈したメンヘラを観ているようでもありました。
ほら、「俺にしか守れない!」とか言わせちゃうので。ほら、髪型もボブだったので(大偏見)

「どれが」市子なのか?という謎が、その「どれもが」市子であると導かれていくような終盤のシーンもあり、視聴後はどこか晴れやかな余韻もありました。

と書きつつも、明確な答えを提示せず、どういうメタファーなのか咀嚼しきれないシーンもいくつかあり、何気に市子と同い年だから頑張れ市子!って気持ちにもなったし、先日観た「ソルトバーン」も相まって、わたしの頭の中はモヤモヤのモヤです。