kojikoji

市子のkojikojiのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.2
No.1633 監督: 戸田彬弘
今まさに旬の杉咲花が輝いている。
さすがに話題作、予想した通りの映画だった。

 たかだか2時間の映画なのに、時間が凝縮していて、市子の人生をしっかり見せられた気持ちになる。映画でしか味わえない感覚、こんな映画がまた観たいと思わせる映画だった。

2015年8月。
大阪で恋人の長谷川(若葉竜也)と幸せな日々を送る市子(杉咲花)はプロポーズを受けた翌日突如失踪する。
訪れた警察は驚くべきことを口にする。「川辺市子」という女性は存在しないというのだ。
 長谷川は、市子の行方を追い、市子の旧友や知人を探し市子の素性を明らかにしていくのだが、それはまさに壮絶な半生だつた。

民法772条2項(抜粋)婚姻の解消若しくは取り消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。
こうして生まれてきた子供は、原則として、元夫を父とする出生の届出以外受理されず、戸籍上も元夫の子として扱われることになる。所謂「300日問題」である。

この元夫の子供にすることを嫌って、出生届を出さなかった無戸籍の子供は、令和2年9月末日時点で法務省が把握しているのは合計 3235 名いるそうだ。

 失踪事件と無戸籍、そして明らかになっていく真相と市子の人生。サスペンスの味わいに強烈な人間ドラマが、重要なシーンでなり続けるチェロの重苦しい音色のように、心に響き続ける。
 
 杉咲花が、その市子を時に悲しく、時に絶望し、投げやりになり、わずかな幸せに大粒の涙を流して訴えてくる。迫真の演技に称賛し、そんな市子に魅せられる。
 日本アカデミー賞の主演女優賞を受賞してもおかしくない演技だった。残念ながら旬の旬がもう一人いた。安藤サクラ。これは強敵すぎた。

 女優杉咲花、彼女もまた天才の一人に違いない。
kojikoji

kojikoji