タリホー

市子のタリホーのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.8
生まれた環境で人間はこうも苦しめられなければならないのか。
自身の戸籍はなく、難病の妹の介護を行う。ただ“市子”としての人生を送りたいだけなのに環境がそれを許さない。

妹の酸素マスクを外し殺した後、帰宅した母親の「ありがとう」の言葉が響いた。限界を迎えていたのはもちろん市子だけではなかった。

制度の隙間に落ちた市子は死にかけの蝉の如く足掻く。そんな時に救いを与えたのは義則であった。
あまり笑わない無愛想な市子は、義則の前だけでは無邪気な本当の“市子”でいられたのだろう。

市子のヒーローになりたかった秀和。見返りを求めた彼は、自身が処分した男と同じように市子を「悪魔」と呼んでしまう。
市子の中で秀和も死に値する人間になった瞬間であった気がする。
どのような背景を持っていようと4人殺した市子は本当に悪魔なのかもしれない。

自殺志願者の戸籍を貰うことで新たな人生を得る。新たな戸籍で再び義則と幸せになれることを祈る。
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