これは何とも重く喰らう作品…
多分、今作では登場人物の誰かしらに多少なりとも共感できるのであれば物凄く刺さるはず。そんな気がする。
恵まれず、自らが選べない家庭環境。市子の視点だ。
片親、新たな父親、生まれつき重病且つ不治の病の妹。それに加えて自らは戸籍がない。つまりこの国に存在しない。こんなにも外的要因でハンデを背負わせた製作陣よ、恐ろしいぞ笑
そんな市子が求めたのは、普通。世間の誰もが思う普通の暮らし。それこそがたまたま出会えた底抜けな善意の持ち主であり、ケーキ屋という夢であったのだ。またそれは義則という普通の幸せだったのだろう。
市子はなんら異常ではないだろう。周りと比べマイナスからのスタートだからこそ、周りよりも普通を貪欲に求めた結果行き着いただけにすぎないと思う。
あの時ああしていればという場面が市子には一歳なかったように俺は思う。もうどうしようもなく行き着くところに行き着いてしまったといしか思えないのだ。
だからこそ、何ともいえぬ重さを喰らってしまった。
俺は市子に比べて、信じられないほど恵まれた家庭環境に生まれたから全く共感はできない。もし共感するとしたら、突如去った恋人が自分のコントロール外で起きたトラブルのせいで去ってしまいただただ無力を感じるしない義則の対しては今後そのような状況が訪れないとは言い切れないくらいだ。
それでもこんなにも喰らったのだから、共感できるのならばこの感情は計り知れないほど大きくなるだろうと思う。
中々よかったです。