えっくすてぃ

市子のえっくすてぃのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 離婚後300日問題での無戸籍、難病指定の姉妹を抱えることへの苦労、掲示板での自殺幇助など市子という人間の生き方を描きつつ現代に内在する問題を取り上げた作品。ドキュメンタリーという分類がされていたのに納得。

 特に市子の、難病指定の妹を手にかけるシーン、その後ありがとうと返し鼻歌を歌いながら家事を仕出す母親の一連の回想シーンは、ずっとゾワゾワしていた。市子の無表情さだったり、部屋と市子を交互に映しながら、その後の母親の限界だったという告白。でも生きていくために、追い込まれていく中でしなければならなかった選択。法に則れば間違った選択でしかないのだけれども、それをしなければ現代社会では「正しく」生きられないという究極の選択。

 ただ一度でもそんな選択をしてしまうと、ずっと間違えたまま突き進むしかない。その中で掴んだ「幸せ」は市子にとって本当に望んだ通りのものだったのだろうか。最後のシーンで鼻歌(母親が歌ってたのと一緒かな)を歌いながら無表情に歩いていく市子の様子からはうかがい知ることができない……。見終えたあとの余韻感がすごい作品だった。
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