ゆりな

市子のゆりなのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.0
予告からは、ねほりんぱほりんの「戸籍がない人」の回と、最初の白骨化されたニュースの時点で、これ「夏目アラタの結婚」を予期させた。

令和とは思えない、古めかしいアパート。
緊張感ある邦画あるある音楽がない、ただただ蝉や自然の音。巻き戻ったり進んだりするフィルム写真の年数。

市子が夢を聞かれて答えられなくて「うちが夢とか持ったらあかん」って言うのは、貧乏な家庭で育つと「夢を持つ」発想がないんだよね。毎日生きるだけで必死だから。
だから「一緒にケーキ屋やろ!」「今日記念日にしよ!」って明るく言ってくれる友達がいたの、いいことだよ。

なぜかたまたま字幕ありで見たのだけど、結構おすすめです。
細かい伏線とか物音が字幕になるので、あぁ、これもこれも伏線……!とより気付けるので。
そして頭から全ての伏線がするする回収されていく作品だった。

北村と市子の夏だけ、ノスタルジックでフィルム写真みたいな雰囲気が良かった。ほんと数分だったけれど。

市子にとっては命の尊さが分からず、蟻を潰して殺してしまうような子どもみたいなものだったのだと思う、終始。

むしろ本作が好きな人は「夏目新の結婚」がハマると思うので、ぜひ読んでみて欲しい。
観終わった後に、ポスター写真見るととてもゾッとする。

以下ネタバレ


・回想シーンで長谷川くんに対して「一緒のお布団に入って、長谷川くんの匂いを感じて、朝起きると横に寝顔があるのが嬉しくて」に100共感してしまった。
あのラストの出会いからの振り返りシーンだけが幸せで、暗めの「花束みたいな恋をした」だった。でもとても好き。

・そんな!北くんは殺さなくても!!と思っていたが、同級生かつ逃げるのを手伝っていた北くんと自分と似た背格好と年齢の女性が死ぬことで、「市子が死んだ」と思わせるアリバイになるもんね。

・こんなこと言ったら、この映画が始まらないけど、普通の幸せを望んだのたならプロポーズ適当な理由つけて先延ばしにすれば良かったじゃんね!と思ったけれど、ラストの童謡歌うあたりでそうじゃないと気付く。
そんな綺麗な話じゃないのだ。
だから次で幸せを見つけて、もう誰も殺めないで欲しいし、電話に出なかった長谷川は市子のトリックにもしかしたら気付いたんだろうね。
ゆりな

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